樹木の概要
アカマツ
- 樹種(じゅしゅ):アカマツ
- 学名(がくめい):Pinus densiflora
- 漢字(かんじ):赤松
- 分類(ぶんるい):マツ科マツ属
- 別名(べつめい):メマツ
- 分布(ぶんぷ):本州、四国、屋久島南限の九州、朝鮮半島南部
- 形態(けいたい):常緑針葉高木
- 樹形(じゅけい):不整形
- 樹高(じゅこう):10~35m
- 雌雄(しゆう):雌雄同株・雌雄異花
- 花(はな):4~5月/雄花1cm(直径)/雌花0.5cm(直径)
- 実(み):花が咲いた翌年の秋(10月)/4~5cm(長さ)
- 特徴(とくちょう):樹皮が赤褐色で、新芽が赤っぽく、幹がしなやかな曲線を描く、クロマツとともに「二葉松」の代表
アカマツの話
「メマツ」と呼ばれるアカマツ
モミ、ツガなどと同じマツ科の仲間です。山の尾根などでよく見られる常緑の針葉樹で、樹皮が赤いことから「アカマツ」といわれています。
クロマツに比べて、枝もやや細く、全体的にやさしい感じで、女性的という意味で、「メマツ」ともよばれています。
クロマツは、枝ぶりも力強く、「オマツ」といわれます。
天然のアカマツは、本州、四国、屋久島南限の九州、朝鮮半島に分布し、防風林、砂防林、庭木、盆栽などに利用されています。
アカマツは林をつくります。また、アカマツが密集し、土地がやせ、日当たりが良く、水はけが良く、風通しが良い、落ち葉がたまりにくい急斜面で、梅雨にしっかり雨が降るなどの条件がそろえば、マツタケ(松茸)が生えることがあります。
アカマツを観察しよう!
★木の年齢を知りたいときは
アカマツは、枝が出ている(出ていた)節目を見れば、だいたいの樹齢(木の年齢)が分かります。ただし長い年数が経過すると、小さなころの節目が埋没してわからなくなるため、枝や幹の節目を数えたあと5年をプラスすると、おおよその樹齢を知ることができます。
★幹を観察してみましょう
幹はまっすぐに、枝はやや下向きに伸びます。 樹皮が赤褐色で新芽が赤っぽく、幹がしなやかな曲線を描いています。
樹皮は年をとると深く割れ、カメの甲羅のような形に剥がれます。
★二本ひと組の針のような葉
松葉模様で知られる二本の針のような葉です。葉は細く、短く、長さ10cmほどの細い針のような葉が二つずつ小さな枝(短枝)の先に付いて、二本ひと組になっています。先は鋭く尖っていますが、葉はやわらかめで、先端を触ってもさほど痛くありません。クロマツの葉は硬く、痛いです。
このように二本でひと組の葉をもつマツのことを「二葉松」といいます。
アカマツは、クロマツやリュウキュウマツとならび、古くからの二葉松の野生種です。
日本にはそのほか、五本ひと組の葉をもつ五葉松が分布しています。
マツの葉の特徴として、二葉(または三葉)、五葉いずれも、葉を合わせると、円柱になるという、おもしろい特徴があります。観察してみてください。
★花を観察してみましょう
雄花と雌花は同じ木に付き(雌雄同株)、若い枝の下方に雄花、枝先に雌花が付きます。
マツの球果「マツぼっくり」は二年成り
このようにマツの特徴は、針のような葉を持つことのほか、球果(マツぼっくり/松かさ)をつくることです。マツの球果は「二年成り」です。花が咲いてから球果(マツぼっくり)は熟すまで2年かかります。花が咲いた翌年の秋には、長さ4~5cmのマツぼっくりと呼ばれる緑色の球果を付け、その枝元には、雄花がたくさん咲きます。球果はクロマツよりやや小さく卵形で、はじめは緑色、熟すと茶褐色です。マツぼっくりの「鱗片」の中にツバサを付けた種が二つ並んで入っています。
アカマツと人とのかかわり
★正月飾りにも用いられるマツ
マツは一年じゅう緑の葉をたやさない常緑樹であることで、「不老不死」や「長寿」を表わす木として神聖視され、魔よけの力もあると信じられてきました。そのことから、正月飾りに用いられています。
★松脂と琥珀
マツの幹には、松脂がふくまれています。そのため枯れたマツの芯はよく燃えるので、むかしから火をたく時の焚きつけや松明として用いられてきました。
また、この松脂が長い時を経て地層の中で固まったものが、琥珀です。
★アカマツの薪
アカマツの薪は、一気に燃え、灰もほとんど残りません。そのため、たくさんの薪を長期間たき続ける、陶磁器やガラスなどの窯業で、燃料として利用されてきました。
たとえば備前焼では「釉薬」を使わないのですが、アカマツの燃えた灰がかかって自然に釉薬をかけたようになります。備前焼の場合、薪をアカマツにしないと備前焼になりません。
★キノコとともに生きる
マツには、栄養の少ない荒れ地などのきびしい環境でも生きることができるヒミツがあります。根に共生するキノコの仲間「菌根菌」があるからです。よく知られている菌根菌に、高級キノコ「松茸」があります。
菌根菌のマツタケは、アカマツの根に寄生し、20年ほど育つと、キノコをつくります。具体的には、アカマツの根の中で菌糸で菌根という根をつくり、アカマツの根よりも遠くまで土の中に伸びていき、アカマツに必要なリン酸などの養分を広く集めてきて、アカマツに与えます。かわりにアカマツは炭水化物(糖)をマツタケに与えることができ、みごとに共生しています。
マツタケは香りが高く、古くから高級食材として日本人に愛されてきました。しかし、成長が遅いことや、ほかの菌類が少ない土でなければ生きれないなどの理由のほか、最近では、アカマツの林に人の手が入らなくなったり、松くい虫の被害などもあり、ますます希少になっています。
★東大寺大仏殿を支えるアカマツ
1709年に再建された奈良県の東大寺大仏殿の屋根を支える2本の梁(虹梁)に、宮崎県えびの市にある白鳥神社境内にあった2本のアカマツが使われています。
戦国時代(1567年)に焼失した大仏殿を再建するにあたり、最も重量な部材の一つである虹梁の材料が見つからず、長い間、大仏様は野ざらしにされていました。3,020トンの屋根を2本の柱で支えるのですが、柱と柱の間隔7.7mに対し、長さがその3倍の23.1mで支える適材でなければならなかったのです。
日本中を探し、1702年、宮崎県えびの市の白鳥神社に高さ54mの、曲がりも虫食いもない樹齢2000年といわれるアカマツが2本あることが発見され、御用材に選ばれました。
1703年、総勢100人ほどの人が1週間かけて2本のアカマツを伐採し、それぞれの大木から直径1m、長さ23.6mの虹梁材が切り出され、のべ10数万人の人々の手で9ヶ月かけて東大寺まで運ばれました。
白鳥神社のある「えびの高原」付近はアカマツの名所です。「赤松千本原」と呼ばれるアカマツ林や、韓国岳付近にはアカマツの樹海が、甑岳登山道の途中の森には樹齢250年以上のアカマツの巨木があり、いわゆる「アカマツの群生地」となっています。