ヒサカキは海岸かいがんに近ちかい低山地ていさんちに生はえる常緑じょうりょくの広葉樹こうようじゅで、サカキ（榊さかき）と同おなじサカキ科かの仲間なかまです。

秋田県あきたけんや岩手県いわてけんから南みなみの日本にほんの野山のやまにごく普通ふつうに生はえている木きです。

枝えだの先端せんたんにある頂芽ちょうがは、細長ほそながく、カマ型がたに曲まがっていて、その形かたちが、「古代こだいの勾玉まがたま」に似にているといわれており、サカキと同おなじです。

ヒサカキには、雄おすの木きと雌めすの木きがありますが、同株どうしゅもあります。

ヒサカキの名なの由来ゆらい

ヒサカキはサカキよりも小ちいさな葉はを付つけます。「姫ひめ」には「小ちいさい」「かわいい」という意味いみがあり、サカキ（榊さかき）に姫ひめを付つけて「ヒサカキ（姫榊ひさかき）」という名なになったといわれています。非ひサカキ、陽ひサカキという説せつもあります。

ちなみに天然てんねんのサカキは関東以西かんとういせいから沖縄おきなわにかけて分布ぶんぷし、葉はがやや大型おおがたで、葉はの縁へりにギザギザ（鋸歯きょし）がないことで、ヒサカキと簡単かんたんに区別くべつできます。

葉はの縁へりに鋸歯きょしがある葉は

ヒサカキの葉はは、長楕円形ちょうだえんけいで、長ながさ3～7cm、葉はの縁へりに鋸歯きょしがあり、中央ちゅうおうにくぼみがあります。青々あおあおとした光沢こうたくと厚あつみがある葉はは、枝えだに互たがい違ちがいに付つきます（互生ごせい）。

ヒサカキの幹みきを観察かんさつしよう

樹皮じゅひは、暗褐色あんかっしょくから黒灰色こくかいしょくです。なめらかで、不規則ふきそくな小こジワがあります。

匂においが強つよいヒサカキの花はな

ヒサカキは厳きびしい冬ふゆが終おわり、春はるの気配けはいが感かんじられる時じ期きになると、最初さいしょに黄白色おうはくしょくの花はなを咲さかせます。春はる、葉はの付つけ根ね（葉腋ようえき）に白色はくしょくの小ちいさな花はなが下向したむきに数個すうこ咲さきます。小ちいさなベルのような花はなには強つよい匂においがあり、春はるの訪おとずれを告つげてくれます。

雌雄異株しゆういしゅで、雄おすの木きには雄花おばな、雌めすの木きには雌花めばなが咲さきますが、このほかに、両性花りょうせいかの咲さく木きもあり、雄おすと雌めすの境界線きょうかいせんがはっきりしていません。それどころか、ヒサカキの雄おすと雌めすは性転換せいてんかんすることがあるということが分わかってきています。

ヒサカキの実み

秋あきから冬ふゆ、緑色みどりいろだった球形きゅうけいの実みが黒くろみがかった濃こい紫色むらさきいろに熟じゅくします。
ヒサカキの熟じゅくした実みにはメジロやツグミなどの小鳥ことりが多おおく集あつまり、食たべた鳥とりの糞ふんは、藍色あいいろに染そまります。

実みは、草木染くさきぞめにも使つかわれます。

ヒサカキやサカキと人ひととのかかわり

サカキとは「真榊まさかき」の意味いみで、もともとは、一年いちねん中じゅう、緑みどりの葉はを付つける縁起えんぎの良よい木きすべてを指さしていたといわれています。

サカキやヒサカキの枝えだは、昔むかしから家いえの神棚かみだなに供そなえられてきました。お墓はか、仏壇ぶつだんへのお供そなえものであり、「玉串奉奠たまぐしほうてん」などの神事しんじになくてはならないものです。
そのほか生垣いけがき、公園樹こうえんじゅ、庭木にわきなどとして利用りようされてきました。
また、枝葉しようや果実かじつは、草木染くさきぞめの染料せんりょうとして使用しようされます。

神棚かみだなや祭壇さいだんに祀まつられてきたヒサカキ

ヒサカキは、日本にほんの神道しんとうにおいて神棚かみだなや祭壇さいだんに祀まつられるサカキの代用品だいようひんとして用もちいられてきました。

古代こだい、すべてのものの中なかに神かみ（魂たましい）が宿やどっているという考かんがえ方かた（アニミズム）があった時代じだいは、世界中せかいじゅうで長寿ちょうじゅ・健康けんこうが一番いちばんの願ねがいであり、その象徴しょうちょうとして「巨樹きょじゅ」や、どのような環境かんきょうにあっても美うつくしい色いろ艶つやの「常緑じょうりょくの木々きぎ」が大切たいせつにされてきました。これは古代こだい宗教しゅうきょうの世界せかい共通きょうつうの特徴とくちょうだといえます。

日本にほんではその中なかでも、美うつくしさと艶つやや品ひんがあり、巨木きょぼくの枝葉しようよりも採取さいしゅしやすいサカキが使つかわれてきました。

宮崎みやざきの昔むかしの人々ひとびとは、標高ひょうこう約やく500m付近ふきんのカシ林帯りんたいの山やまあいが生活せいかつの中心ちゅうしんであったため、そこにあった美うつくしいサカキが利用りようされてきました。

その後ご、海岸地帯かいがんちたいに人ひとが住すむようになってくると、サカキが手てに入はいらない地域ちいきでは大切たいせつな御神事ごしんじ以外いがい、サカキの仲間なかまであるヒサカキを神棚かみだなやお墓はかなどへのお供そなえものに使つかうことが多おおくなりました。