コナラはブナ科かの落葉らくよう広葉こうよう樹じゅで、高たかさ15～20mになる高木こうぼくです。イチイガシやマテバシイと同おなじブナ科かの仲間なかまです。日ひ当あたりの良よい山野さんやに多おおく見みられますが、普通ふつうコナラはクヌギと同様どうようにほとんどが植林しょくりんで、椎茸しいたけの「ホダ木ぎ」や薪炭しんたんなどに利用りようされていました。

コナラは再生力さいせいりょくが強つよく、根元ねもと近ちかくで切きって台木だいぎとし、ひこばえ（萌芽ほうが）を出ださせるということを繰くり返かえし、長ちょう期間きかんにわたり人ひとの暮くらしを支ささえてきました。

中国ちゅうごく地方ちほうでは薪炭しんたんやホダ木ぎとして、コナラやクヌギの切きり株かぶから「ひこばえ」を利用りようするほか、兵庫県ひょうごけんの北摂ほくせつ地方ちほうでは、コナラやクヌギを地上ちじょう１〜2mで伐採ばっさいし、樹幹じゅかんからの「ひこばえ」を繰くり返かえし再生さいせいさせる方法ほうほうで利用りようしています。特とくに兵庫県ひょうごけんの北摂ほくせつ地方ちほうでは、この高たかい切きり株かぶを「台木だいぎ」と呼よんでいます。

福島県ふくしまけんの只見ただみは、日本にほん有数ゆうすうの雪国ゆきぐにですが、冬ふゆにコナラやブナ、ミズナラの伐採ばっさいを行おこないます。１mより少すこし高たかいところで切きり、積つもった雪ゆきを利用りようして搬出はんしゅつを行おこなっていました。１～2mのところで切きると、夏なつの間あいだ、光合成こうごうせいで貯ためた養分ようぶんが残のこっていて、翌年よくとしの春はるになったらヒコバエがどんどん出でて再生力さいせいりょくが高たかくなります。雪国ゆきぐにではこのような台木だいぎを残のこすやり方かたを「あがりこ」と呼よび、今いまでも行おこなっているそうです。

ひなもり台だいにある「みやざき新巨樹しんきょじゅ100選せんのコナラ」は、全体ぜんたいが谷たにの上うえに傾かたむいて茂しげっています。まったく切きった形跡けいせきがないので、天然てんねんだと思おもわれます。この木きが崖がけの際きわに発芽はつがしたことで、天然てんねんで生いき残のこることができたと思おもわれます。木きの上うえの方ほうにはヒノキがあり枝えだを伸のばす余裕よゆうがなかったため、谷たにの方ほうの他ほかの植物しょくぶつの枝葉えだはが茂しげっていないところに向むかって枝えだを伸のばしたため、このようなゆがんだ樹形じゅけいになったと考かんがえられます。

木きの成長せいちょうの過程かていで周まわりの環境かんきょうが影響えいきょうした結果けっかこういう形かたちになったということや、コナラの南限なんげんが屋久島やくしまを含ふくむ南九州みなみきゅうしゅうであり、標高ひょうこうが高たかいので大おおきな木きになりえたということ、また、樹形じゅけいが真まっすぐではなく、この木きを利用りようするのに適てきさないものだったことなどが、この木きが残のこった要因よういんだと思おもわれます。

このコナラには、たくさんの着生ちゃくせい植物しょくぶつが着ついていますが、このように一ひとつの空間くうかんの中なかにたくさんの生物せいぶつが共存きょうぞんして生活せいかつできることを「生物せいぶつの多た様性ようせいが高たかい」といいます。

生物せいぶつの共存きょうぞんには、共生関係きょうせいかんけいと競きょう争関係そうかんけい、寄き生関係せいかんけいなどがありますが、着生ちゃくせい植物しょくぶつのほとんどが共生きょうせいです。ただ場所ばしょを借かりているだけですから、腐朽菌ふきゅうきんの問題もんだいはありますが、基本的きほんてきにコナラには有害ゆうがいな影響えいきょうを及およぼしません。

この生物せいぶつ多た様性ようせいが高たかく、包容力ほうようりょくのあるこの巨木きょぼくの姿すがたを見みて、生物せいぶつと生物せいぶつの共存きょうぞん関係かんけいを感かんじ取とることができます。

落おち葉ばを踏ふみしめながら、冬ふゆの雑木林ぞうきばやしを歩あるいてみましょう。ゴツゴツした肌はだのコナラ。コナラに巻まきついたフジのつるも見みえます。つるが巻まく方法ほうほうは、見方みかたによってちがうのですが、フジの場合ばあい、つるの伸のびる方ほうに向むかって、左ひだりまわり（時計とけいと反対はんたいまわり）に巻まいています。

ほかの木きの幹みきを、テイカカズラやツタウルシのように付着根ふちゃくこんや付着盤ふちゃくばんでしがみつきながらよじ登のぼっていく植物しょくぶつもあります。付着根ふちゃくこんや付着盤ふちゃくばんは養分ようぶんを吸すいとるわけではないので、寄き生植物せいしょくぶつではありません。ツタは、巻まきひげの変化へんかした吸盤きゅうばんがあり、これでしがみついていきます。

コナラの名なの由来ゆらい

コナラはミズナラなど、ほかのナラの仲間なかまより高たかさも葉はも小ちいさいことが、名なの由来ゆらいです。ちなみにミズナラは、別名べつめいをオオナラといい、幹みきも直径ちょっけい２mに達たっします。

コナラの幹みきと樹皮じゅひ

幹みきの太ふとさは直径ちょっけい50～60cmほどで、幹みきは、まっすぐに伸のびるクヌギと異ことなり、ゴツゴツと曲まがりながら伸のびます。

樹皮じゅひは灰色はいいろか、灰はい褐色かっしょくで、縦たてに浅あさい不規則ふきそくな裂さけ目めがあります。老木ろうぼくでは深ふかく裂さけ、筋状すじじょうに隆起りゅうきします。表面ひょうめんがセーターのガーター編あみ目めのようです。

枝えだや幹みきは、再生力さいせいりょくが強つよく、昔むかしから利用りようしてきました。

葉はを観察かんさつしてみよう！

葉はは単葉たんようで互生ごせいし、長ながさが5～15cm、幅はばが4～6cmで、先端せんたんが鋭するどく尖とがり、縁へりには大おおきな尖とがったギザギザ（鋸歯きょし）があります。葉はの表おもては緑みどりですが、葉はの裏うらはやや白しろっぽいです。

サクラと同おなじころに開花かいかしますが、春はるの芽吹めぶきの色いろは銀色ぎんいろがかっており、葉はの先端せんたんに赤あかみがほんのりと加くわわり、やさしい感かんじです。落葉樹らくようじゅなので、春はるは木全体きぜんたいが若葉わかばのため、白しろっぽく見みえ、たいへんきれいです。

葉はは、若葉わかばのころは銀ぎん白色はくしょくの絹毛きぬげに包つつまれていますが、しだいに毛けが落おちて無毛むもうになり、葉はの裏うらに少すこし残のこす程度ていどになります。

葉柄ようへいは長ながく、1cmほどあり、ミズナラと区別くべつがつきます。

特徴的とくちょうてきな冬芽とうが

冬ふゆ、休眠とうみん状態じょうたいにあった冬芽とうがは、春はるにふたたび芽吹めぶくために準備じゅんびされたものです。葉はをていねいに折おりたたみ、冬ふゆの寒さむさや乾燥かんそう、病害虫びょうがいちゅうから冬芽とうがを守まもるための工夫くふうをしています。

コナラの冬芽とうがは特徴的とくちょうてきな雫しずくの形かたちで、ウロコのような硬かたい皮かわ（芽鱗がりん）に包つつまれており、まるで厚あつい防寒着ぼうかんぎを着きているかのようです。

春一番はるいちばんが吹ふき、寒さむさが緩ゆるみはじめる３月がつの終おわりから４月がつのはじめにかけて、コナラの冬芽とうがは少すこしずつ硬かたく閉とじていた芽鱗がりんを開ひらきはじめ、中なかから幼おさない葉はが芽吹めぶいてきます。

冬芽とうがから顔かおを出だした薄うすい黄き緑色みどりいろをした幼おさない葉はには、白しろい絹毛きぬげがみっしりと生はえていて、全体ぜんたいが白しろっぽいです。銀色ぎんいろがかった緑褐色りょくかっしょくの葉はは、やがて大おおきく成長せいちょうしていきますが、同時どうじに、新あたらしい枝えだもどんどん伸のびて、光合成こうごうせいを力ちから強づよくはじめます。

コナラの落葉らくよう

雑木林ぞうきばやしを構成こうせいする主要しゅような樹木じゅもくのひとつコナラは、秋あきに紅葉こうよう・黄葉こうようして、葉はを落おとす落葉樹らくようじゅです。クヌギやコナラは、秋あきに葉はが枯かれた時点じてんでは、葉はが落おちず、いつまでも茶色ちゃいろの葉はが残のこっており、春はるに新あたらしい葉はが出でるころに落葉らくようします。落おち葉ばは良よい腐葉土ふようどとなり、その中なかでたくさんの生物せいぶつが生いきており、森もりを豊ゆたかにします。

コナラの雄花おばなと雌花めばな

コナラは、１本ぽんの木きに雌花めばなと雄花おばなを別々べつべつに咲さかせます（雌雄同株しゆうどうしゅ）。

コナラの冬芽とうがには、花はなになる芽め（花芽はなめ）と、葉はになる芽め（葉芽ようが）があります。４月がつ、葉芽ようがが開ひらいて新あたらしい枝えだを伸のばすと同時どうじに、花芽はなめも開ひらき、花はなを咲さかせます。

雄花おばなは、新あたらしい枝えだの基もとの部分ぶぶんに穂ほになってぶら下さがるように伸のびます。花序かじょの長ながさは2～6cmほどです。

また、雌花めばなは、新あたらしい枝えだ先さきにある新あたらしい葉はの付つけ根ね（葉腋ようえき）に数個すうこ付つきますが、ドングリにまで育そだつのは、一ひとつか二ふたつだけです。

雄花おばなも雌花めばなも花はなびら（花弁かべん）らしきものはなく、やがてドングリの殻斗かくとになる総苞そうほうから、雌めしべ（柱頭ちゅうとう）が飛とび出だしてきます。コナラは、風かぜに花粉かふんを届とどけてもらって受粉じゅふんする風媒ふうばいです。同おなじドングリの仲間なかまでもマテバシイは、虫むしに花粉かふんを運はこんでもらう虫媒ちゅうばいです。

雌花めばなは、最初さいしょは小ちいさくて、まったく目立めだちませんが、受粉じゅふんした後あと、６月がつ頃ごろには、殻斗かくとに包つつまれた実みができます。そして７月がつ頃ごろには、殻斗かくとの中なかから緑色みどりいろのドングリが顔かおを出だし、９月がつ頃ごろには、殻斗かくとをかぶった緑みどり色いろのドングリとなり、10月がつに熟じゅくして黒褐色こくかっしょくになります。

コナラの実みを観察かんさつしよう

ナラやカシの実みをドングリといいますが、コナラの実みは代表的だいひょうてきなドングリの一ひとつです。

コナラのドングリは、細長ほそながく、大おおきさは1.5～2.0cmです。ドングリの肌色はだいろは黒くろくて小粋こいきな縞模様しまもようがあり、美うつくしいです。

ドングリは帽子ぼうしのように見みえるもの（殻斗かくと）をかぶっており、殻斗かくとにはブツブツとした鱗片りんぺんが付ついています。形かたちは、浅あさい杯さかずきの形かたちです。

コナラのドングリは「一年いちねん成なり」で、４月がつに花はなが咲さき、その年としの秋あきに果実かじつ（ドングリ）が熟じゅくします。

ドングリは落下らっかすると、すぐに根ねを出だして、からだを固定こていします。その状態じょうたいで冬ふゆを越こし、春はるになると芽めを伸のばしはじめ、本葉ほんばを開ひらきます。成木せいぼくには２～３年ねんおきに大量たいりょうのドングリが実みのります。ドングリは、鳥とりや動物どうぶつたちの貴重きちょうな食料しょくりょうとなります。

ドングリのなる木き

ドングリはブナ科かの樹木じゅもくが付つける堅果けんかのことで、ドングリがなる木きは、日本にほんに自生じせいするブナ科かの植物しょくぶつで、全部ぜんぶで22種しゅといわれています。落葉広葉樹らくようこうようじゅのブナ、コナラ、クリ、クヌギなど9種しゅと、常緑じょうりょく広葉樹こうようじゅのイチイガシ、シラカシ、アカカシ、ウバメガシ、スダジイなど13種しゅあります。

実みのなり方かたには、コナラやイチイガシのように春はるに花はなが咲さき、秋あきには熟じゅくす「一年いちねん成なり」と、春はるに開花かいか、受粉じゅふんし、じっくりと成熟せいじゅくし、翌年よくとしの秋あきになる「二年にねん成なり」があります。マテバシイやスダジイ、クヌギなどは二年にねん成なりです。

なぜ木きによって、このような違ちがいがあるのでしょうか？不思議ふしぎですね。早はやく熟じゅくすと動物どうぶつに食たべられる危険きけんが少すこしは減へるからとか、逆ぎゃくにゆっくり熟じゅくすことで、特定とくていの虫むしや動物どうぶつから食たべられないようにしているなど、いろいろなことが考かんがえられますね。

また、ドングリには大豊作だいほうさくの年としと不作ふさくの年としの周期しゅうきがあります。ドングリは里さとのイノシシやタヌキ、ネズミ、ゾウムシなどの虫むしたちなどに食たべられますが、すべて食たべつくしてしまわれると、芽めを出だすことができなります。仮かりに毎年まいとし、豊作ほうさくにすると、エサが豊富ほうふになり動物どうぶつが増ふえ、せっかく実みをつけてもほとんど食たべられてしまいます。そこで、実みをあまり実みを付つけない年とし（不作ふさくの年とし）をもうけることで、エサ不足ふそくで動物どうぶつや昆虫こんちゅうを減へらすことができます。そして、その翌年よくとしに今度こんどはたくさんドングリを実みのらせることで、動物どうぶつに食たべられずに芽めを出だすことができます。種しゅをつないでいくための知恵ちえですね。植物しょくぶつって、本当ほんとうにかしこいですね。

縄文じょうもん時代じだい、主食しゅしょくだったドングリ

ドングリを実みのらせる木々きぎは、その果実かじつの量りょうの多おおさから、イノシシやクマ、シカなどのエサにもなりましたが、人間にんげんにとっても貴重きちょうな食糧しょくりょうでした。縄文じょうもん遺跡いせきからもドングリがたくさん確認かくにんされており、いかにドングリがクルミやトチの実みとともに、当時とうじから大切たいせつな食たべものであったかが分わかっています。

縄文じょうもん時代じだいからは「すり石いし」が出土しゅつどしています。縄文じょうもん時代じだいのクッキーは、「縄文じょうもんクッキー」とよばれ、当時とうじはお菓子かしのクッキーというよりも、野生やせいの動物どうぶつの肉にくなどを混まぜて、ハンバーグのようにして食たべていたといわれています。

縄文じょうもん時代じだいの料理りょうりに使つかわれていたドングリは、アク抜ぬきが必要ひつようないクリやシイ、ブナばかりではなかったことが分わかっています。アクのあるナラやアカガシなどのドングリを、アクやゴミを同時どうじに取とり除のぞく「水みずさらし」の方法ほうほうで、料理りょうりしていました。愛知県あいちけんの千石遺跡せんごくいせきではたくさんのコナラのドングリの貯蔵ちょぞうが確認かくにんされています。

スダジイなどのシイ類るいやマテバシイなどは、アクが少すくないので、そのまま煎いるだけで食たべることができますが、コナラのドングリは渋しぶくてアクが強つよいので、アク抜ぬきして使つかいます。アクの主成分しゅせいぶんはタンニンで、少量しょうりょうなら整腸せいちょう作用さようがありますが、たくさん摂とるとお腹なかをこわします。

最近さいきん、カフェなどでドングリ―コーヒーを飲のむことができることがありますが、これはアク抜ぬきしたドングリをフライパンで２０～３０分ふんほど焙煎ばいせんし、水分すいぶんを飛とばし、コーヒー豆色まめいろになったら、ミルで挽ひいて粉こなにし、コーヒーと同おなじように淹いれたものです。

ドングリのアク抜ぬきの仕方しかた①［従来じゅうらい型がた］

アク抜ぬきが必要ひつようだが一いち年ねん成なり成なりで実みの数かずが多おおいコナラやアラカシのドングリが多おおく使つかわれており、「水みずさらしの方法ほうほう」でアク抜ぬきをして利用りようされていたことが分わかっています。

★水みずさらしのアク抜ぬき

①　石いしうすの中なかで殻からごとつぶす

②　石いしうすに水みずを入いれて殻からなどのゴミやアクなどの毒どくを流ながし出だす

③　②を繰くり返かえす

④　デンプンだけが残のこる

⑤　土器どきに入いれて煮にる

ドングリのアク抜ぬきの仕方しかた②［現代げんだい風ふう］

①　３日間かかん、水みずに浸つけ、浮ういた実みを取とりのぞく。浮ういた実みには虫むしがいたり、中なかが腐くさっていたりしている

②　煮にて殻からを割わり、虫むしを殺ころす。また、干ほすことで、煮にた後あとに、柔やわらかさが残のこる

③　２日間かかん、天てん日干ぴぼしをする

④　殻からと薄皮うすかわを取とりのぞき、重曹じゅうそうを１キロあたり２スプーン入いれた湯ゆで煮にこぼす。重曹じゅうそう入いりの湯ゆを変かえながら５回かい、同おなじことを繰くり返かえす

コナラと暮くらす

コナラは、九州きゅうしゅうの内陸部ないりくぶや本州ほんしゅうでは「里山さとやま」の主役しゅやくともいえる落葉樹らくようじゅです。

人里ひとざとちかくに今いまでも残のこっている雑木林ぞうきばやしは、「里山さとやま」とよばれ、薪まきや炭すみなどの材ざいを確保かくほしたり、落おち葉ばを利用りようするために維持いじされてきた、日本人にほんじんにとってなくてはならない森もりでした。そして、コナラは落葉樹らくようじゅでは里山さとやまの代表的だいひょうてきな樹木じゅもくなのです。

ナラは漢字かんじで「楢なら」と書かき、つくりの「酋しゅう」は酋長しゅうちょうなど「治おさめる者もの」という意味いみです。木きとしての風格ふうかくがあります。英語えいごでは「オーク」と呼よばれ、森もりの王おう・女王じょおうとされています。

コナラは、ミズナラより環境かんきょうへの適応性てきおうせいが高たかく、北海道ほっかいどうから九州きゅうしゅうまで広域こういきで分布ぶんぷしており、宮崎県みやざきけんでもブナ帯たいから海岸線かいがんせんまで広ひろく里山さとやまに分布ぶんぷしています。コラナは伐採ばっさいしても切きり株かぶから「ひこばえ」を形成けいせいし、再生能力さいせいのうりょくが強つよいので、かつては薪炭材しんたんざいや椎茸しいたけのホダ木ぎとして利用りようされ、里山さとやまの雑木林ぞうきばやしにはコナラ林りんが二次にじ林りんとして作つくられていました。

コナラの材ざいは堅かたく、材ざいとしての利用りよう価値かちが高たかいのですが、材質ざいしつの変化へんかが大おおきく、水分すいぶんが抜ぬけにくいので乾燥かんそうしにくく、うまく乾燥かんそうさせないと割われが入はいりやすかったり、腐くさりやすかったり、加工かこうしにくかったりします。利用用途りようようとが限かぎられていました。しかし、近年きんねんでは、乾燥かんそうなどの製材せいざい技術ぎじゅつが発達はったつし、フローリング材ざいや家具かぐなどに商業しょうぎょう利用りようされています。

また、コナラの薪まきは、火ひもちが良よいので、薪まきストーブなどでたいへん好このまれ、アウトドアでも人気にんきです。葉は、実み、樹皮じゅひは、タンニンを多おおくふくみ、染色せんしょくにも利用りようされます。

生物せいぶつ多た様性ようせいと里山さとやまのヒミツ

「生物せいぶつ多た様性ようせい」とは、地ち球上きゅうじょうには多様たような生物せいぶつ（動植物どうしょくぶつなど）が生息せいそくしていることをいいます。生態系せいたいけいの多様性たようせいがベースにあり、その上うえに種しゅの多様性たようせい、遺伝的いでんてき多様性たようせいから構成こうせいされます。

みなさんの学校がっこうでも同おなじですよね。いろいろな子こどもたちがいて、それぞれ違ちがっていて楽たのしいですよね。

それと同おなじで、地ち球上きゅうじょうには、肌はだの色いろが異ことなるたくさんの人種じんしゅがそれぞれ大切たいせつなのと同おなじように、また、同おなじ民族みんぞくでも考かんがえ方かたや生うまれ育そだった環境かんきょうにより生いき方かたや考かんがえ方かたが変かわります。同おなじ木きの葉はであっても、すべて個性こせいがあり、形かたちも生長せいちょうの仕方しかたも異ことなります。そして、遺伝子いでんし自体じたいも一人ひとり一人ひとり、変化へんかしていきます。植物しょくぶつや動物どうぶつの世界せかいでもいろいろな種類しゅるいの生物せいぶつがいてはじめて、バランスがとれます。命いのちの根源こんげんはこの多様性たようせいにあります。個性こせいを大切たいせつにすることは、生命力せいめいりょくを育はぐくむことになります。

あらゆる生物せいぶつが一緒いっしょにいるという多様性たようせいこそが、生命力せいめいりょくの源みなもとであり、より良よい地ち球きゅう環境かんきょうには欠かかせないことなのです。

日本にほんは、1992（平成へいせい４）年ねんの地ち球きゅうサミットで生物せいぶつ多た様性条約ようせいじょうやくに署名しょめいし、世界せかいで18番目ばんめに条約じょうやくを締結ていけつしました。しかし、貝類かいるいや微び小しょう生物せいぶつなどの宝庫ほうこであった干潟ひがたが埋うめ立たてられたり、奥山おくやまに入はいり込こんで乱獲らんかくしたり、開発かいはつなどで貴重きちょうな森もりが壊こわれたり、多おおくの森もりや里山さとやまがほったらかしにされ手てを入いれないがために、森もりの生態系せいたいけいのバランスが崩くずれてしまったり、外来生物がいらいせいぶつや化学物質かがくぶしつなどで生態系せいたいけいが混乱こんらんしたりして、日本にほんの、いや地ち球きゅう全体ぜんたいの悲惨ひさんな状況じょうきょうは、悪化あっかの一途いっとをたどっています。

そのような中なか、実じつは、古来こらいより生物せいぶつを含ふくめた自然しぜんに「畏敬いけいの念ねん」を抱いだき、寄より添そってきた日本人にほんじん独特どくとくの考かんがえ方かたが大切たいせつで、実じつは生物せいぶつ多た様性ようせいの思想しそうそのものなのです。

奥山おくやまと里山さとやま

日本にほんには、「奥山おくやま」と「里山さとやま」という考かんがえ方かたがあります。

「奥山おくやま」には山やまの神かみがおられると信しんじられており、人ひとは勝手かってに奥山やまおくに入はいったり、動植物どうしょくぶつをとったりしてはいけない場所ばしょです。奥山おくやまや神聖しんせいな山やまで狩かりや木きを伐採ばっさいするときには、あらかじめ山やまの神かみにお祈いのりしてから森もりに入はいり、森もりの恵めぐみをいただいたあとは、感謝かんしゃの祈いのりをするという風習ふうしゅうがあります。椎葉村しいばそんや西米良村にしめらそんなど、日本にほんの中山間ちゅうさんかん地ちには今いまでも残のこっており、文化ぶんか人類学じんるいがくや民俗学みんぞくがくの研究けんきゅう素材そざいにもなっています。

そこには、ある思想しそうがあります。『足たるを知しる文化ぶんか』です。自分じぶんが使つかったり食たべたりする以上いじょうに余分よぶんにはいただかないという考かんがえ方かたです。森もりのものを根ねこそぎ取とらない。常つねに次つぎに来くるもの（動物どうぶつや人ひと）のために残のこしておくことで、次世代じせだいにも残のこしていくという山やまの文化ぶんかです。常つねに必要ひつような分ぶんだけを自然しぜんから分わけ与あたえられていることに感謝かんしゃしながら生いきてきた日本にほんの考かんがえ方かたです。

一方いっぽう、「里山さとやま」は、いわゆる「二次林にじりん」とよばれる林はやしです。二次林にじりんというのは、木々きぎが自然しぜんに育そだってできた森もり（自然林しぜんりん）ではなく、暮くらしのために一部いちぶの木きだけを故意こいに残のこしたり植うえたりしてできた林はやしや、人ひとが木々きぎを選えらび伐採ばっさいしたことで生態系せいたいけいが変かわった林はやしなどのことです。また、二次林にじりんの中なかでも「里山さとやま」は、ほかの動植物どうしょくぶつとも共生きょうせいできる多様性たようせいのある「雑木林ぞうきばやし」であることが多おおいです。「奥山おくやま」とは異ことなり、常つねに人ひとが入はいり、その恵めぐみをいただきながら寄よりり添そってきた場所ばしょです。里山さとやまは、シカやイノシシや鳥とりたちにとっても貴重きちょうな場所ばしょで、「食物しょくもつ連鎖れんさ」のバランスを取とりながら、生物せいぶつ多様性たようせいの中なか、生いきてきました。

このように里山さとやまは、奥山おくやまと違ちがい、常つねに人ひとが入はいり、その恵めぐみをいただきながら、ほかの動植物どうしょくぶつと共ともに暮くらすことができる「雑木林ぞうきばやし」で、里山さとやまでは人ひとはシカやイノシシや鳥とりなども一緒いっしょに生いきてきました。里山さとやまがあるからこそ生いきることができる動植物どうしょくぶつも、実際じっさいにあります。

そして、この「奥山おくやまと里山さとやま」という日本人にほんじんの考かんがえ方かたこそが、生物せいぶつ多様性たようせいを大切たいせつにする日本人にほんじんらしい考かんがえ方かたで、世界せかいが注目ちゅうもくしている持続じぞく可能かのうな環境かんきょうSDGｓにつながります。

里山さとやまのヒミツ

「里山さとやま」は、人里離ひとざとはなれた奥山おくやまとも、市街地しがいちとも異ことなり、人間にんげんの手てが入はいりながらも、人間にんげんのみに管理かんりされるわけではなく、自然しぜんが独自どくじの生態系せいたいけいを生うみ出だしながら、木きと虫むしと動物どうぶつと人ひととともに皆みなで作つくり上あげてきた場所ばしょです。

里山さとやまには、人ひとが必要ひつような樹木じゅもくが植うえられ、かつては燃料ねんりょうや肥料ひりょうの供給きょうきゅう場所ばしょとして、雑木林ぞうきばやしの里山さとやまは、人ひとの暮くらしに密着みっちゃくしていました。具体的ぐたいてきには、その土地とちに元々もともとあった森林しんりんが伐きられたあと、再生さいせいした木々きぎが何度なんども収穫しゅうかくされていき、最後さいごに再生力さいせいりょくの強つよい樹種じゅしゅが残のこっていき、里山さとやまの雑木林ぞうきばやしの二次林にじりんをつくっていきます。本来ほんらい、自生じせいしているスダジイやシラカシなど繁茂はんもする木々きぎを伐採ばっさいし、その代かわりに人間にんげんの暮くらしに必要ひつようなコナラやクヌギなどを植林しょくりんします。すると、常緑じょうりょくの照葉樹しょうようじゅの暗くらい森もりから落葉広葉樹らくようこうようじゅの明あかるい光ひかりが差さし込こむ森もりに変化へんかすることで、環境かんきょうが変かわり、他ほかの樹木じゅもくや生いきものたちの活動かつどうの場ばができるようになります。また、人ひとの手てが入はいることで、雑木林ぞうきばやしの地面じめん（林床りんしょう）には、ササや低木類ていぼくりんが刈かられ、春はるの野草やそうや野のの花はなにとっての恰好かっこうの住すみ心地ここちのよい環境かんきょうになります。コナラやクヌギなどが芽吹めぶいて葉はを開ひらき、光ひかりをさえぎってしまう前まえのわずかな早春そうしゅんの明あかるい林床りんしょうには、キンランやヤブレガサ、各種かくしゅスミレなどの花はなが咲さき、美うつくしいです。

里山さとやまは、自然しぜんを構成こうせいする森もりが改変かいへんされた後あとに現あらわれる二次的にじてきな自然しぜんですが、アカマツやクヌギ、コナラなどの日陰ひかげで育そだちにくかった下生したばえの草木くさきが、その手入ていれにより命いのちを吹ふき返かえし、新あたらしい森もりの形かたちを作つくり始はじめるのです。

このような里山さとやまのシステム（仕組しくみ）がつくられたのは、縄文じょうもん時代じだいからですが、さらに人々ひとびとの営いとなみの場ばと生態系せいたいけいのバランスを保たもち、持続可能じぞくかのうな形かたちで、より多様性たようせいを高たかめた関係かんけいを生うみ出だしたのは、古墳時代こふんじだいともいわれています。

雑木林ぞうきばやしの女王じょうおうコナラ

里山さとやまの雑木林ぞうきばやしの代表的だいひょうてきな落葉樹らくようじゅ「コナラ」は、温暖おんだんな人里近ひとざとちかくの環境かんきょうを好このみます。山奥やまおくに生はえるブナ林帯りんたいの樹木じゅもくとくらべ、広ひろい範囲はんいで適応てきおうでき、繁殖力はんしょくりょくもあるからです。

1955（昭しょう和わ30）年ねんごろまでは、里山さとやまの木々きぎは、家庭用かていようの薪まきや炭すみに使つかわれる材ざいとして、また、椎茸しいたけ栽培さいばいの「ホダ木ぎ」にするためなどに利用りようされてきました。

雑木林ぞうきばやしではコナラなどの落おち葉ばが林床りんしょうを埋うめ尽つくしますが、それが腐葉土ふようどとなり、土つちを肥こやします。また、落おち葉ばを集あつめ堆肥たいひをつくり、畑はたけなどで利用りようしました。落おち葉ばの中なかにはカブトムシの幼虫ようちゅうなどがたくさんいます。

このように人々ひとびとは、里山さとやまを暮くらしの中心ちゅうしんにすえて、木々きぎの伐採ばっさいや、落おち葉ばかき、ササ刈かりなどの手入ていれをすることで、雑木林ぞうきばやしを維持いじし、里山さとやまを中心ちゅうしんに暮くらしてきました。

残念ざんねんながら、最近さいきんでは、電気でんきや石油せきゆ、ガスなどの普及ふきゅうにより薪炭しんたんが暮くらしに不可欠ふかけつでなくなったことや、化学かがく肥料ひりょうの普及ふきゅうで落おち葉ばを堆肥たいひに使つかわれることが少すくなくなり、雑木林ぞうきばやしの手入ていれも行おこなわれなくなり、すっかり荒あれてしまい、加くわえて都市開発としかいはつや宅地開発等たくちかいはつとうによって、生物せいぶつ多様性たようせいが高たかい里山さとやまどころか奥山おくやままで減へってしまいました。

雑木林ぞうきばやしの女王じょうおう、コナラは、切きり株かぶの根本ねもとから「わき芽め」が伸のびやすく、生長せいちょうが早はやく、再生力さいせいりょくが強つよいので、里山さとやまの中心的ちゅうしんてきな存在そんざいでした。切きり株かぶの根本ねもとから萌芽ほうがし立たち上あががった数本すうほんの幹みきのことを「ひこばえ」と呼よび、切きり株かぶに「ひこばえ」が生はえている姿すがたを「株立かぶたち」といい、雑木林ぞうきばやしには、株立かぶたちしたコナラがたくさんあり、たくましい再生力さいせいりょくで、人々ひとびとの暮くらしを支ささえてきました。

しかし、使つかわれる量りょうこそ減へりましたが、いまでも薪まきや炭すみ、椎茸しいたけ栽培さいばいのホダ木ぎなど、宮崎県みやざきけんの奥地おくちではまだ利用りようされ、里山さとやまが守まもられているところがあります。さらに里山さとやまを維持いじするために、最近さいきんでは薪まきストーブを普及ふきゅうさせ薪まきのある暮くらしを復活ふっかつさせようという考かんがえ方かたや、アウトドアブームがおこっています。薪まきやバーベキュー用ようの炭すみなどを利用りようすることで、里山さとやまを守まもることにもつながります。

里山さとやまのコナラカフェ

ひなもりの森もりの女王じょうおうコナラは、みやざき新巨樹しんきょじゅ100選せんの一本いっぽんで、天然てんねんのものです。

ゴツゴツとした樹皮じゅひは、コナラが生いきてきた時代じだいを感かんじさせます。そして、昆虫こんちゅうたちが好このむカフェでもあります。コナラの傷きずが入はいった樹皮じゅひからは樹液じゅえきが出でて、チョウやアリ、カナブンやカブトムシなど多おおくの虫むしたちが樹液じゅえきをなめにやってきます。そして集あつまってきた虫むしたちを食たべにやってくるヤマガラやカケスなどの鳥とりたちに、ドングリを食たべべるタヌキやネズミやイノシシにシカ。多おおくの動物どうぶつたちがコナラと共生きょうせいしています。

また、着生ちゃくせい植物しょくぶつや共生きょうせいする植物しょくぶつもたくさんあります。太ふとく大おおきな枝えだや幹みきにはコケなどの地衣ちい類るいや藻類そうるいなども住すみつき、フジなどの、つる植物しょくぶつなども絡からみついています。

まさにコナラは、様々さまざまな生物せいぶつが共生きょうせいしている場ばをつくる木きであり、ここに生物多様性せいぶつたようせいを感かんじますね。