森林の持つ環境への役割
森の役割
地球上の動物にとって最も大きな影響力を持っているのは森林といわれます。食べ物はもとより動物の生息環境、ひいては地球環境にも大きな影響力を持っているからです。
植物は水と二酸化炭素と太陽の光から酸素をつくり、命を支えるエネルギーをつくり蓄えます。 また、発達した森林は、高木や低木、古木や巨木、若木や枯木、広葉樹や針葉樹、草本やコケなど多様な植物でつくられています。このような多様性に富んだ森林には、次のような重要な働きがたくさんあります。
1:やわらかい葉や果実など、動物に必要な食べ物をたくさんつくります。
2:シカやイノシシ、ヤマネやムササビ、フクロウやクマタカ、カブトムシやクワガタなどが生活できる多様な環境をつくります。(巨木、樹洞、朽ち木など)
3:落ち葉や朽ち木、土壌微生物の働きによりふかふかの森林土壌をつくり、雨水を吸収して森の中に蓄え、少しずつ蒸発させたり下流に流したりと調整して、洪水や干ばつ等の被害を少なくしてくれます。また、渓流にヤマメやウナギなどの水生動物が生息できるのも、森林の貯水と調整機能により水量が確保できる環境があるからです。
4:森林をつくる樹木の根は、大きさや張り方、形、堅さなど様々です。根は山の岩や土壌をしっかりつかまえ、山地崩壊防止に大きな役割を果たしています。
5:私たち人間にとっても食料、薬草、染色や繊維、生活用具、燃料、住宅材料等のたくさんの恵みを提供してくれます。
このように森林は、地球上の生き物、とりわけ動物にとっては“命のオアシス”の役割をもっています。
森を次世代へ繋ぐ
日本は、南の沖縄から北の北海道まで気温の差が大きいので、地方によって、生えている木がちがいます。そのため木の集団である「森」や「林」にもいろいろなタイプがみられます。照葉樹林は、西日本で多くみられ、葉に光沢のある植物が多く、スダジイやタブノキ、常緑のカシ類、ヤブツバキなどの樹木が中心の林です。夏緑樹林は、東日本や内陸部にみられ、冬に落葉する植物が多く、ブナ、ミズナラ、カエデの仲間などの樹木が中心の林です。針葉樹林は、北海道の東部や本州の山岳地帯でみられ、シラビソ、コメツガ、エゾマツ、トドマツなどの常緑の針葉樹が中心の林です。
残念ながら、現在の日本には人の手が加わっていない自然の森や林はわずかしか残っていません。とくに、昔から多くの人々が生活していた地方では、そのような森や林は、ほとんどみられません。また、里山には、いろいろな生き物たちが生活しています。カブトムシ、クワガタムシなどの甲虫やチョウ類、トンボの仲間、タヌキ、イノシシ、シカなどのほ乳類、鳥類など、多くの動植物がそこで生活をしています。
日々の生活に電気やガスが使われるようになったり、落ち葉を利用した肥料が使われなくなると、人々の生活と里山との関わりが薄くなり、人々は里山林の手入れをしなくなります。そうなると、林のなかはササ類や、日陰でもよく育つ常緑のヒサカキなどの植物が茂り、林全体が暗くなります。そのため、比較的明るいところに生える植物や、それらの植物とともに生活している動物たちが住めなくなってしまいます。
このままだと、里山林は生き物の種類が少ない林になっていきます。豊かな自然とは、ただ植物が茂っているというだけではなくて、多くの種類の動植物たちが生活できるような環境でなくてはなりません。私達は自分達の生活と密接に関係のあるこうした森や林を次世代に繋いでいかなくてはならないのです。