樹木の概要
ヒノキ
- 樹種(じゅしゅ):ヒノキ
- 学名(がくめい):Chamaecyparis obtusa
- 漢字(かんじ):桧・檜
- 分類(ぶんるい):ヒノキ科ヒノキ属
- 別名(べつめい):檜(ひ)
- 分布(ぶんぷ):福島県以南の本州、四国、屋久島南限の九州
- 形態(けいたい):常緑針葉高木
- 樹形(じゅけい):傘形
- 樹高(じゅこう):20~40m
- 雌雄(しゆう):雌雄同株・雌雄異花
- 花(はな):4月/雄花2~3mm(直径)/雌花3~5mm(直径)
- 実(み):10〜11月/8〜12mm(直径)
- 特徴(とくちょう):加工が容易な上に緻密で狂いがなく、日本人好みの強い芳香を長期にわたって発する、日本では最高品質の建材
ヒノキの話
ヒノキは、山地に自生する常緑の針葉樹で、スギと同じくヒノキ科の仲間で、日本固有種です。自然林では山の尾根など乾燥した地や岩場に多く見られます。スギよりは成長が遅く、急峻な崖にへばりつくように生えるヒノキは、年輪がわからないほど緻密で、とても堅くなります。
ヒノキは油を含む材質のため、昔は火を起こす木として使われてきました。このことから「火の木」と呼ばれ、これがヒノキの名の由来という説と、他にも「太陽のように尊い」という意味の「日の木」を語源とする説があります。
いずれにしても「万葉集」にもヒノキは歌われるなど、日本古来の暮らしと密接な関わりがあります。たとえば家の柱のすべてにヒノキを使わず、大壁柱にはスギを、床柱にエンジュを使うと、火除けになり、家に火を呼ばないという言い伝えなども残っています。
天然のヒノキは、福島県以南の本州、四国、九州の屋久島まで分布します。
スギとともに各地で植林され、スギは谷沿い、アカマツは尾根沿い、ヒノキはそれらの中間、山の中腹から尾根沿いに植林されました。
東北地方などヒノキの育たないところでは、昔から建築材として、スギや柔らかいモミなどが使われてきました。北海道ではエゾマツが、沖縄では湿気やシロアリの害に強いイヌマキが、家の材として利用されてきました。
ヒノキは常緑の木で、春夏秋冬、緑色の葉がびっしりと付ています。しかし、この緑色の葉が何年も枝に残るわけではなく、枝先に次々と新しい葉が伸びるのに合わせて、古い葉は少しずつ茶色に枯れ落ちます。
ヒノキを観察しよう!
ヒノキのまっすぐな幹
ヒノキの幹はまっすぐで、枝はほぼ水平に伸び、全体的には傘形になります。
常緑の高木で、高さ約30m、幹の直径は60cm~1mです。スギよりは太くなりません。
成長が遅く、材は年輪が細かく、昔から優良な建築材として利用されてきました。
ヒノキの樹皮
樹皮は赤褐色で、幼木は縦にやや粗く裂けます。成長するにしたがい、長く帯状になって剥がれます。老木では樹皮がさらに細かく剥がれます。
ヒノキの樹皮は、「檜皮」と呼ばれ、屋根を葺く材料として、日本人の暮らしを支えてきました。
木に登ってヒノキの樹皮を剥ぐ人を「原皮師」といい、内樹皮を傷つけないよう、外樹皮のみを上手に剥ぐと、約10年後には、同じ木から再び樹皮を剥ぐことができます。作業は、木の成長が止まっている9月から3月までの間に行います。
剥いだ樹皮をさらに薄く剥ぎ、形をきれいに整えた後、屋根の下地板に竹釘でとめていき、檜皮葺きの屋根が造られます。
葉の裏にあるY字気孔帯
葉は長さ1~3mmで、うろこ状に並んで付きます。葉の先は尖りません。
葉はサワラとよく似ていますが、葉の裏で違いを見つけることができます。ヒノキの葉を裏返すと、白い気孔の集まりである「気孔帯」が「Yの形」に見えます。同じ針葉樹ヒノキ科の仲間サワラと似ていますが、サワラの気孔帯は、「Xの形(蝶形)」に見え、葉先も尖っており、ヒノキと区別できます。
小さな雌花と雄花
一つの木に雌花と雄花が付き、別々に咲きます(雌雄同株)。
4月頃、雌花と雄花が枝先に付きます。雄花は赤みを帯びた楕円形で、雌花は球形です。どちらもとても小さくて見えにくいです。
ヒノキの球果
ヒノキの球果は、直径1cmほどの球形をしています。開花した年の10~11月に赤褐色に熟します。スギの球果(スギぼっくり)にも似ていますが、もっと小さくてスギほどの刺々しさはありません。
熟した球果は、サッカーボールの形に裂開し、果鱗の割れ目から種をポロポロと落とし、風に飛ばします。果鱗は8~9個ほどで、それぞれに2~4個の種が入っています。
ヒノキと人とのかかわり
最高級建材として大切にされてきたヒノキ
ヒノキは、年輪が細かく、弾力性にすぐれ、腐りにくく、丈夫で美しく、家、神社、寺などを建てる材木に適しており、古くから建築材などに利用され、大切に保護され育てられてきました。
たとえば天然林の残る木曽では、サワラ、ネズコ、アスナロ、コウヤマキと共に「木曾の五木」と呼ばれ、江戸時代から保護の対象とされてきました。
木材としては、丈夫で、まっすぐで加工しやすく、製材後のくるいが少なく、湿気に強く、堅さが適度で、曲がりが少なく、耐水性や耐久性にすぐれています。木の中心部が赤いスギと比べると、全体的に白っぽく、なめらかで艶がある美しい木目です。防虫効果もあり、さわやかな香りが特徴の木材です。
ヒノキは、奈良県の法隆寺や東大寺の建材として多用されております。
日本に仏教が伝わってから、たくさんの仏像がつくられてきました。いろいろな木が使われていますが、針葉樹が多く、中でも仏像彫刻に一番多く使われ、国宝も多いのがヒノキで、次はカヤです。広葉樹では、カツラや、香りの高いクスノキです。
香りさわやかなヒノキ
ヒノキには、強く長持ちする香り成分が含まれています。日本人好みの強い香りには、気分を落ち着かせる効果があり、昔から風呂桶や洗い桶、手桶などに利用されてきました。ヒノキには、アルファピネンやヒノキチオ―ルなどの香り成分があり、菌の繁殖を抑えたり、ダニやシロアリを防ぐ働きがあります。さらに、自分の邪魔になる、まわりの草木の成育を抑えるのにも利用しています。わたしたちは、これらの性質を利用して、昔から建物を建てる材として利用してきました。また、昨今は、わたしたちの心をやわらげる効果を利用し、ヒノキ林の森林浴や森林セラピーなどを行なっています。
千年以上も使えるヒノキ材
スギに比べて成長が遅い木ですが、香りが高く、光沢があり、木目が細かく、堅くて腐りにくい(耐久性が高い)ため、お寺や神社など長く使われる建物の材料として欠かせないものでした。
ヒノキ材でしっかり造った建築物は、千年以上も使えるといわれています。世界最古の木造建築物である奈良県の法隆寺にも、ヒノキが多く使われています。屋根もヒノキの木の皮「檜皮」でふかれています。
日本では、スギは庶民の木、ヒノキは王侯貴族の木という概念が古くからあり、宮殿や社寺はヒノキで造られ、代表的なヒノキ建築は伊勢神宮です。天皇家の御料林や、伊勢神宮をはじめ各地の神社仏閣では、ヒノキを「社木」として植林・管理し、改築用として保存しています。
徳川幕府は、ヒノキを重要な木材であるとし、「ヒノキ一本、首ひとつ」と謳われるほど、大切に管理してきました。木曾全山は、幕府御三家の中でも尾張藩が所有し、木曽川を筏で伐採したヒノキを流し、名古屋の熱田から全国に出してきました。明治以降も、国有林として国が大切に管理しています。
江戸時代に歌舞伎が流行し、演劇舞台の基本ができましたが、歌舞伎や能楽で使われる舞台は、ヒノキでできており、役者として成功することを「ヒノキ舞台に立つ」といわれますが、ヒノキ舞台が正式な舞台だからです。京都の清水寺の舞台は、巨大なケヤキの柱を建て、貫を縦横に通し、楔で組み固めた土台の上に約190枚のヒノキ板を張り、造られています。
植林されてきたヒノキ
ヒノキは、日本では最高級の建材として利用価値も高く、各地で広く植林されてきました。
日本で一番、植林されているスギは、肥沃で水分のある谷部に、一方のヒノキは尾根部の土壌が少なく乾燥気味のところに植林します。これは、自然状態でのヒノキがそのような場所に生育しているためです。
天然のヒノキは、元来、森の中では、スギと同じように広葉樹との競争に弱い木ですが、スギよりももう少し厳しい環境にも耐えられる針葉樹でもあります。このように、生物と生物の競争の結果、得られた最適な場所を「生態的最適域」といいます。
自然の中ではスギやヒノキの生育している場所が限られているのは、そのことが大きく影響しています。
これに対し、植物間の競争をなくして、その植物が最大の成長をする環境を「生理的最適域」といいます。栽培植物は「生理的最適域」を人為的につくることによって収量を上げています。
ヒノキの産地は、天然ヒノキの群生林がある「日本三大美林」のひとつ、長野県と岐阜県の県境にある木曾谷のヒノキのほか、三重県の尾鷲、奈良県の吉野、静岡県の天竜などが有名ブランドとして知られています。
スギとヒノキの植林地を比べると、先が尖ったスギの葉よりもヒノキの平たい葉の方が、光をやや反射するので、キラキラと光って見えます。
ヒノキクイズ
正解!
ヒノキの葉
ヒノキの葉は、長さ1~3mmで、うろこ状に並んで付きます。葉の先は尖りません。葉は十字対生に(一対の葉と、次節の一対が上から見ると直角をなしていること)付いています。
葉はサワラとよく似ていますが、葉裏で違いを見つけることができます。ヒノキの葉を裏返すと、白い気孔の集まり(気孔帯)が、「Yの形」に見えます。サワラでは、葉の裏の気孔の集まりが「Xの形(蝶形)」に見え、葉先も尖っており、ヒノキと区別できます。
残念!
ヒノキの葉
ヒノキの葉は、長さ1~3mmで、うろこ状に並んで付きます。葉の先は尖りません。葉は十字対生に(一対の葉と、次節の一対が上から見ると直角をなしていること)付いています。
葉はサワラとよく似ていますが、葉裏で違いを見つけることができます。ヒノキの葉を裏返すと、白い気孔の集まり(気孔帯)が、「Yの形」に見えます。サワラでは、葉の裏の気孔の集まりが「Xの形(蝶形)」に見え、葉先も尖っており、ヒノキと区別できます。