樹木の概要
カヤ
- 樹種(じゅしゅ):カヤ
- 学名(がくめい):Torreya nucifera
- 漢字(かんじ):榧
- 分類(ぶんるい):イチイ科カヤ属
- 別名(べつめい):ホンガヤ
- 分布(ぶんぷ):宮城県以南の本州、四国、九州
- 形態(けいたい):常緑針葉高木
- 樹形(じゅけい):幅の広い円錐形
- 樹高(じゅこう):20~25m
- 雌雄(しゆう):雌雄異株
- 花(はな):5月/雄花 2~3mm(直径)/雌花 3~4mm(直径)
- 実(み):10~11月/2cm(直径)
- 特徴(とくちょう):成長は極めて遅いが、寿命は長い。樹林内部の、あまり日の当たらないところで も育つことができる。材は淡いクリーム色で美しく、碁盤や将棋盤に適している。古くは 丸木舟もつくられた
カヤの話
カヤはイチイ科の常緑の針葉樹で、同じイチイ科にイチイという仲間の木がありますが、カヤ属のカヤは日本に一種類しかありません。
高さ25mにもなる高木で、幹の直径は2mにもなります。天然のカヤは、本州の宮城県以南、四国、九州に分布しますが、全国で庭木や公園樹として人気があります。
天然のカヤは基本的には照葉樹林帯の湿った崖でも育ちます。耐陰性が強く、森林の中や木陰などあまり日が照らないところでも育ちます。成長は極めて遅いですが、寿命は長く、大木に育ちます。
宮崎県をはじめ鹿児島県や熊本県の神社の境内には、胸高の直径1mを優に超える巨木が地域のご神木として残され、大切にされています。
宮崎県のカヤ
宮崎県は、カヤ良材の産地として知られています。綾町には500年経って伐採するという計画の「25世紀の森」という植林もあります。500年後のカヤの森を想像してみるのも面白いかもしれませんね。
カヤの材は淡いクリーム色で独特の光沢があり、なめらかで耐久性が高く、建築材や櫛などの器具、家具や彫刻などに使われてきました。特に樹齢300年以上のカヤで作った碁盤や将棋盤は最高級品とされてきました。
縄文時代は、丸木舟などの舟材として利用されてきました。
カヤの名の由来
カヤの名前の由来は、この木の根や枝葉を燃やすと、煙に薬用成分があり、蚊を追い遣る効果があることから「蚊遣りの木」といわれ、これが詰まってカヤとなりました。
カヤを観察しよう!
カヤの幹と樹皮
幹はまっすぐに伸び直立し、広い円錐形です。
樹高は高く、枝はやや水平に開きます。
樹皮は乾皮で、深いひだがあり、灰白色あるいは灰褐色です。
幼木のときは、樹皮は淡灰色でなめらかですが、成長とともに樹皮は濃くなり、縦に浅く裂け、短冊状に剥がれやすくなります。
枝は無毛です。枝の色は初めは緑色ですが、3年目には赤褐色になります。
触ると痛いカヤの葉
葉はらせん状に互生し、水平に2列に並び、羽のように見えます。葉の大きさは、長さ2~3cm、幅2~3mmほどで、形は線形で扁平、先端は鋭く尖っています。手で触ると、チクチク刺さってかなり痛いです。よく似たイヌガヤは、葉がやわらかく、握っても痛くありません。
葉の表の色は深緑色ですが、裏の色は淡緑色で、表裏がはっきりしています。
葉の裏には、白く目立つ二条の気孔帯(気孔の集まり)があります。
カヤの花と実
5月頃、雄花が前年枝の葉の裏面の付け根(葉腋)に多数咲きます。
雄花の長さは、1cmほどの長楕円形です。秋には熟し、クリーム色になり、花粉を飛ばします。
同じころ、緑色をした楕円形の雌花が、前年枝の先端にある新しい葉の基部に数個付きます。雌花は、あまり目立ちません。
数個の雌花の内1個だけが、2cmほどの緑の楕円形の実になります。裸子植物なので果実ではありません。厚い果肉状の皮をかぶっており、この皮を「仮種皮」と呼びます。
年を越して翌年の10月ごろには実は黒く熟して紫褐色となり、地面に落ちます。なかには仮種皮が割れて剥がれ、種が地面にバラバラと落ちるものもあります。そのとき独特の芳香が漂います。落ちている種子をさわると、種子を包んでいる仮種皮は、繊維質なので簡単にくずれます。
カヤと人とのかかわり
カヤの実を食べる
種子は明るい茶色で、硬い種皮(殻)に包まれており、見た目はアーモンドのようです。
種皮を石で割ると、中にもう一枚、ひだがある種皮が出てきます。食べることができますが、ちょっとヤニ臭いです。油分が多く、おいしいです。
昔の人は、「カヤの実」を大事に拾い、アク抜きし天日で干したものを煎っておやつに食べていたそうです。アーモンドよりも香りが高いナッツとなり、戦後は食糧難を支えていたということです。また、近年だけでなく、縄文遺跡からも保存されたカヤの実が出土しています。
また、カヤの実は相撲の土俵の「鎮めもの」としても使われています。米、塩、スルメ、昆布、クリなどとともに土俵中央部の穴に埋められています。
山では、ネズミやリスなどが冬の食糧にと運んで埋め、その一部が忘れられて芽を出します。このようにカヤは森のあちこちに動物によって運ばれ、何千万年も前から生きてきたのですね。
カヤの実油
種には油脂分が多いので、油を搾り、食用としていました。この油で揚げた天ぷらは、サッパリとして非常においしいです。
そのほか灯油や整髪料、塗料、寄生虫の駆除に利用されてきました。
カヤの材でつくられるもの
カヤの材は緻密で狂いがなく、淡いクリーム色で独特の光沢があります。また、なめらかで耐久性が高く、建築材などの器具、家具や彫刻などに使われてきました。
また、カヤは樹脂が多く、水や湿気に強いため、風呂桶などの浴室用具や船舶材などに使われることがありますが、成長が遅く、カヤ材自体の生産量がたいへん少ないため、このような使い方は稀になっています。
碁盤や将棋盤の最高級素材として
カヤの材の最も知られている用途としては碁盤、将棋盤となっています。これらはカヤ材でつくられたものが最高級品とされていて、特に宮崎県綾町で作られているものは全国的に高い評価を受けています。
ただしカヤといっても、碁盤などに使用する高級な材料になるには300年以上かかるといわれ、銘木と言われるカヤ材は1本が一千万円という価値が出るまでに、およそ400年から500年かかるといわれています。年数のたったカヤ材は、しなやかさが特徴で、碁石を打ったときに良い音が響きます。特に「日向榧」は名高いです。
碁盤や将棋盤には、そのほかカツラ、イチョウなどが使われてきました。碁石を入れる碁笥には、ケヤキやケンポナシなどの木目の美しい木が用いられます。
将棋には、ツゲやヤブツバキ、マテバシイ、ヒイラギなどの堅い木が使われ、文字は漆で書き込まれます。
仏像にカヤ材、洗張の張り板にカヤ材
カヤ材は仏像の彫刻に最適な材といわれています。そのことは、平安時代から鎌倉時代にかけて、関東地方で作られた仏像のほとんどが、カヤを材料としていることからも分かります。刃物の切れも良く、釘を打っても材が割れないからでしょう。
ただカヤは独特の芳香が強く、内装材としては不向きです。
カヤの材面は、とてもなめらかで、糊の剥がれが良いことから和服の洗張の張り板に使われていました。昭和30年頃までは、嫁入り道具の一つとし洗張板は欠かせないものでしたが、戦後、カヤ材が枯渇したこと、また、衣食住の和文化が廃れたこともあり、この風習もなくなってゆきました。
カヤクイズ
正解!
選択肢の葉は、カヤ・モミ・スギです。
モミの葉は、カヤの葉と非常に似ていますが、モミの葉は先端がⅯ型に分かれていることから見分けることができます。
カヤの葉は、らせん状に互生し、水平に2列に並び、羽のように見えます。葉の大きさは、長さ2~3cm、幅2~3mmほどで、形は線形で扁平、先端は鋭く尖っています。手で触るとチクチク刺さってかなり痛いです。
スギの葉は、1cmほどの針のような形で、らせん状に互生しています。
残念!
選択肢の葉は、カヤ・モミ・スギです。
モミの葉は、カヤの葉と非常に似ていますが、モミの葉は先端がⅯ型に分かれていることから見分けることができます。
カヤの葉は、らせん状に互生し、水平に2列に並び、羽のように見えます。葉の大きさは、長さ2~3cm、幅2~3mmほどで、形は線形で扁平、先端は鋭く尖っています。手で触るとチクチク刺さってかなり痛いです。
スギの葉は、1cmほどの針のような形で、らせん状に互生しています。