樹木の概要
コナラ
- 樹種(じゅしゅ):コナラ
- 学名(がくめい):Quercus serrata
- 漢字(かんじ):小楢
- 分類(ぶんるい):ブナ科コナラ属
- 別名(べつめい):ホウソ、ハハソ、ナラ
- 分布(ぶんぷ):北海道、本州、四国、九州(沖縄をのぞく日本全土)
- 形態(けいたい):落葉広葉高木
- 樹形(じゅけい):卵形
- 樹高(じゅこう):15~20m
- 雌雄(しゆう):雌雄同株
- 花(はな):4~5月/雄花 約1.5mm(直径)/雄花の集まり(花序) 2~6cm(長さ)/雌花 約2mm(直径)
- 実(み):9~10月/1.5~2cm(長さ)
- 特徴(とくちょう):日当たりの良い山野に自生し、樹皮は濃灰色で、縦に不規則な裂け目が入り、 表面がガーター編み目のようになっているのが特徴。花の咲いた秋には、すぐにドングリが実る
コナラの話
コナラはブナ科の落葉広葉樹で、高さ15~20mになる高木です。イチイガシやマテバシイと同じブナ科の仲間です。日当たりの良い山野に多く見られますが、普通コナラはクヌギと同様にほとんどが植林で、椎茸の「ホダ木」や薪炭などに利用されていました。
コナラは再生力が強く、根元近くで切って台木とし、ひこばえ(萌芽)を出させるということを繰り返し、長期間にわたり人の暮らしを支えてきました。
中国地方では薪炭やホダ木として、コナラやクヌギの切り株から「ひこばえ」を利用するほか、兵庫県の北摂地方では、コナラやクヌギを地上1〜2mで伐採し、樹幹からの「ひこばえ」を繰り返し再生させる方法で利用しています。特に兵庫県の北摂地方では、この高い切り株を「台木」と呼んでいます。
福島県の只見は、日本有数の雪国ですが、冬にコナラやブナ、ミズナラの伐採を行います。1mより少し高いところで切り、積もった雪を利用して搬出を行っていました。1~2mのところで切ると、夏の間、光合成で貯めた養分が残っていて、翌年の春になったらヒコバエがどんどん出て再生力が高くなります。雪国ではこのような台木を残すやり方を「あがりこ」と呼び、今でも行っているそうです。
ひなもり台にある「みやざき新巨樹100選のコナラ」は、全体が谷の上に傾いて茂っています。まったく切った形跡がないので、天然だと思われます。この木が崖の際に発芽したことで、天然で生き残ることができたと思われます。木の上の方にはヒノキがあり枝を伸ばす余裕がなかったため、谷の方の他の植物の枝葉が茂っていないところに向かって枝を伸ばしたため、このようなゆがんだ樹形になったと考えられます。
木の成長の過程で周りの環境が影響した結果こういう形になったということや、コナラの南限が屋久島を含む南九州であり、標高が高いので大きな木になりえたということ、また、樹形が真っすぐではなく、この木を利用するのに適さないものだったことなどが、この木が残った要因だと思われます。
このコナラには、たくさんの着生植物が着いていますが、このように一つの空間の中にたくさんの生物が共存して生活できることを「生物の多様性が高い」といいます。
生物の共存には、共生関係と競争関係、寄生関係などがありますが、着生植物のほとんどが共生です。ただ場所を借りているだけですから、腐朽菌の問題はありますが、基本的にコナラには有害な影響を及ぼしません。
この生物多様性が高く、包容力のあるこの巨木の姿を見て、生物と生物の共存関係を感じ取ることができます。
落ち葉を踏みしめながら、冬の雑木林を歩いてみましょう。ゴツゴツした肌のコナラ。コナラに巻きついたフジのつるも見えます。つるが巻く方法は、見方によってちがうのですが、フジの場合、つるの伸びる方に向かって、左まわり(時計と反対まわり)に巻いています。
ほかの木の幹を、テイカカズラやツタウルシのように付着根や付着盤でしがみつきながらよじ登っていく植物もあります。付着根や付着盤は養分を吸いとるわけではないので、寄生植物ではありません。ツタは、巻きひげの変化した吸盤があり、これでしがみついていきます。
コナラの名の由来
コナラはミズナラなど、ほかのナラの仲間より高さも葉も小さいことが、名の由来です。ちなみにミズナラは、別名をオオナラといい、幹も直径2mに達します。
コナラを観察しよう!
コナラの幹と樹皮
幹の太さは直径50~60cmほどで、幹は、まっすぐに伸びるクヌギと異なり、ゴツゴツと曲がりながら伸びます。
樹皮は灰色か、灰褐色で、縦に浅い不規則な裂け目があります。老木では深く裂け、筋状に隆起します。表面がセーターのガーター編み目のようです。
枝や幹は、再生力が強く、昔から利用してきました。
葉を観察してみよう!
葉は単葉で互生し、長さが5~15cm、幅が4~6cmで、先端が鋭く尖り、縁には大きな尖ったギザギザ(鋸歯)があります。葉の表は緑ですが、葉の裏はやや白っぽいです。
サクラと同じころに開花しますが、春の芽吹きの色は銀色がかっており、葉の先端に赤みがほんのりと加わり、やさしい感じです。落葉樹なので、春は木全体が若葉のため、白っぽく見え、たいへんきれいです。
葉は、若葉のころは銀白色の絹毛に包まれていますが、しだいに毛が落ちて無毛になり、葉の裏に少し残す程度になります。
葉柄は長く、1cmほどあり、ミズナラと区別がつきます。
特徴的な冬芽
冬、休眠状態にあった冬芽は、春にふたたび芽吹くために準備されたものです。葉をていねいに折りたたみ、冬の寒さや乾燥、病害虫から冬芽を守るための工夫をしています。
コナラの冬芽は特徴的な雫の形で、ウロコのような硬い皮(芽鱗)に包まれており、まるで厚い防寒着を着ているかのようです。
春一番が吹き、寒さが緩みはじめる3月の終わりから4月のはじめにかけて、コナラの冬芽は少しずつ硬く閉じていた芽鱗を開きはじめ、中から幼い葉が芽吹いてきます。
冬芽から顔を出した薄い黄緑色をした幼い葉には、白い絹毛がみっしりと生えていて、全体が白っぽいです。銀色がかった緑褐色の葉は、やがて大きく成長していきますが、同時に、新しい枝もどんどん伸びて、光合成を力強くはじめます。
コナラの落葉
雑木林を構成する主要な樹木のひとつコナラは、秋に紅葉・黄葉して、葉を落とす落葉樹です。クヌギやコナラは、秋に葉が枯れた時点では、葉が落ちず、いつまでも茶色の葉が残っており、春に新しい葉が出るころに落葉します。落ち葉は良い腐葉土となり、その中でたくさんの生物が生きており、森を豊かにします。
コナラの雄花と雌花
コナラは、1本の木に雌花と雄花を別々に咲かせます(雌雄同株)。
コナラの冬芽には、花になる芽(花芽)と、葉になる芽(葉芽)があります。4月、葉芽が開いて新しい枝を伸ばすと同時に、花芽も開き、花を咲かせます。
雄花は、新しい枝の基の部分に穂になってぶら下がるように伸びます。花序の長さは2~6cmほどです。
また、雌花は、新しい枝先にある新しい葉の付け根(葉腋)に数個付きますが、ドングリにまで育つのは、一つか二つだけです。
雄花も雌花も花びら(花弁)らしきものはなく、やがてドングリの殻斗になる総苞から、雌しべ(柱頭)が飛び出してきます。コナラは、風に花粉を届けてもらって受粉する風媒です。同じドングリの仲間でもマテバシイは、虫に花粉を運んでもらう虫媒です。
雌花は、最初は小さくて、まったく目立ちませんが、受粉した後、6月頃には、殻斗に包まれた実ができます。そして7月頃には、殻斗の中から緑色のドングリが顔を出し、9月頃には、殻斗をかぶった緑色のドングリとなり、10月に熟して黒褐色になります。
コナラの実を観察しよう
ナラやカシの実をドングリといいますが、コナラの実は代表的なドングリの一つです。
コナラのドングリは、細長く、大きさは1.5~2.0cmです。ドングリの肌色は黒くて小粋な縞模様があり、美しいです。
ドングリは帽子のように見えるもの(殻斗)をかぶっており、殻斗にはブツブツとした鱗片が付いています。形は、浅い杯の形です。
コナラのドングリは「一年成り」で、4月に花が咲き、その年の秋に果実(ドングリ)が熟します。
ドングリは落下すると、すぐに根を出して、からだを固定します。その状態で冬を越し、春になると芽を伸ばしはじめ、本葉を開きます。成木には2~3年おきに大量のドングリが実ります。ドングリは、鳥や動物たちの貴重な食料となります。
ドングリのなる木
ドングリはブナ科の樹木が付ける堅果のことで、ドングリがなる木は、日本に自生するブナ科の植物で、全部で22種といわれています。落葉広葉樹のブナ、コナラ、クリ、クヌギなど9種と、常緑広葉樹のイチイガシ、シラカシ、アカカシ、ウバメガシ、スダジイなど13種あります。
実のなり方には、コナラやイチイガシのように春に花が咲き、秋には熟す「一年成り」と、春に開花、受粉し、じっくりと成熟し、翌年の秋になる「二年成り」があります。マテバシイやスダジイ、クヌギなどは二年成りです。
なぜ木によって、このような違いがあるのでしょうか?不思議ですね。早く熟すと動物に食べられる危険が少しは減るからとか、逆にゆっくり熟すことで、特定の虫や動物から食べられないようにしているなど、いろいろなことが考えられますね。
また、ドングリには大豊作の年と不作の年の周期があります。ドングリは里のイノシシやタヌキ、ネズミ、ゾウムシなどの虫たちなどに食べられますが、すべて食べつくしてしまわれると、芽を出すことができなります。仮に毎年、豊作にすると、エサが豊富になり動物が増え、せっかく実をつけてもほとんど食べられてしまいます。そこで、実をあまり実を付けない年(不作の年)をもうけることで、エサ不足で動物や昆虫を減らすことができます。そして、その翌年に今度はたくさんドングリを実らせることで、動物に食べられずに芽を出すことができます。種をつないでいくための知恵ですね。植物って、本当にかしこいですね。
コナラと人とのかかわり
縄文時代、主食だったドングリ
ドングリを実らせる木々は、その果実の量の多さから、イノシシやクマ、シカなどのエサにもなりましたが、人間にとっても貴重な食糧でした。縄文遺跡からもドングリがたくさん確認されており、いかにドングリがクルミやトチの実とともに、当時から大切な食べものであったかが分かっています。
縄文時代からは「すり石」が出土しています。縄文時代のクッキーは、「縄文クッキー」とよばれ、当時はお菓子のクッキーというよりも、野生の動物の肉などを混ぜて、ハンバーグのようにして食べていたといわれています。
縄文時代の料理に使われていたドングリは、アク抜きが必要ないクリやシイ、ブナばかりではなかったことが分かっています。アクのあるナラやアカガシなどのドングリを、アクやゴミを同時に取り除く「水さらし」の方法で、料理していました。愛知県の千石遺跡ではたくさんのコナラのドングリの貯蔵が確認されています。
スダジイなどのシイ類やマテバシイなどは、アクが少ないので、そのまま煎るだけで食べることができますが、コナラのドングリは渋くてアクが強いので、アク抜きして使います。アクの主成分はタンニンで、少量なら整腸作用がありますが、たくさん摂るとお腹をこわします。
最近、カフェなどでドングリ―コーヒーを飲むことができることがありますが、これはアク抜きしたドングリをフライパンで20~30分ほど焙煎し、水分を飛ばし、コーヒー豆色になったら、ミルで挽いて粉にし、コーヒーと同じように淹れたものです。
ドングリのアク抜きの仕方①[従来型]
アク抜きが必要だが一年成り成りで実の数が多いコナラやアラカシのドングリが多く使われており、「水さらしの方法」でアク抜きをして利用されていたことが分かっています。
★水さらしのアク抜き
① 石うすの中で殻ごとつぶす
② 石うすに水を入れて殻などのゴミやアクなどの毒を流し出す
③ ②を繰り返す
④ デンプンだけが残る
⑤ 土器に入れて煮る
ドングリのアク抜きの仕方②[現代風]
① 3日間、水に浸け、浮いた実を取りのぞく。浮いた実には虫がいたり、中が腐っていたりしている
② 煮て殻を割り、虫を殺す。また、干すことで、煮た後に、柔らかさが残る
③ 2日間、天日干しをする
④ 殻と薄皮を取りのぞき、重曹を1キロあたり2スプーン入れた湯で煮こぼす。重曹入りの湯を変えながら5回、同じことを繰り返す
コナラと暮らす
コナラは、九州の内陸部や本州では「里山」の主役ともいえる落葉樹です。
人里ちかくに今でも残っている雑木林は、「里山」とよばれ、薪や炭などの材を確保したり、落ち葉を利用するために維持されてきた、日本人にとってなくてはならない森でした。そして、コナラは落葉樹では里山の代表的な樹木なのです。
ナラは漢字で「楢」と書き、つくりの「酋」は酋長など「治める者」という意味です。木としての風格があります。英語では「オーク」と呼ばれ、森の王・女王とされています。
コナラは、ミズナラより環境への適応性が高く、北海道から九州まで広域で分布しており、宮崎県でもブナ帯から海岸線まで広く里山に分布しています。コラナは伐採しても切り株から「ひこばえ」を形成し、再生能力が強いので、かつては薪炭材や椎茸のホダ木として利用され、里山の雑木林にはコナラ林が二次林として作られていました。
コナラの材は堅く、材としての利用価値が高いのですが、材質の変化が大きく、水分が抜けにくいので乾燥しにくく、うまく乾燥させないと割れが入りやすかったり、腐りやすかったり、加工しにくかったりします。利用用途が限られていました。しかし、近年では、乾燥などの製材技術が発達し、フローリング材や家具などに商業利用されています。
また、コナラの薪は、火もちが良いので、薪ストーブなどでたいへん好まれ、アウトドアでも人気です。葉、実、樹皮は、タンニンを多くふくみ、染色にも利用されます。
生物多様性と里山のヒミツ
「生物多様性」とは、地球上には多様な生物(動植物など)が生息していることをいいます。生態系の多様性がベースにあり、その上に種の多様性、遺伝的多様性から構成されます。
みなさんの学校でも同じですよね。いろいろな子どもたちがいて、それぞれ違っていて楽しいですよね。
それと同じで、地球上には、肌の色が異なるたくさんの人種がそれぞれ大切なのと同じように、また、同じ民族でも考え方や生まれ育った環境により生き方や考え方が変わります。同じ木の葉であっても、すべて個性があり、形も生長の仕方も異なります。そして、遺伝子自体も一人一人、変化していきます。植物や動物の世界でもいろいろな種類の生物がいてはじめて、バランスがとれます。命の根源はこの多様性にあります。個性を大切にすることは、生命力を育むことになります。
あらゆる生物が一緒にいるという多様性こそが、生命力の源であり、より良い地球環境には欠かせないことなのです。
日本は、1992(平成4)年の地球サミットで生物多様性条約に署名し、世界で18番目に条約を締結しました。しかし、貝類や微小生物などの宝庫であった干潟が埋め立てられたり、奥山に入り込んで乱獲したり、開発などで貴重な森が壊れたり、多くの森や里山がほったらかしにされ手を入れないがために、森の生態系のバランスが崩れてしまったり、外来生物や化学物質などで生態系が混乱したりして、日本の、いや地球全体の悲惨な状況は、悪化の一途をたどっています。
そのような中、実は、古来より生物を含めた自然に「畏敬の念」を抱き、寄り添ってきた日本人独特の考え方が大切で、実は生物多様性の思想そのものなのです。
奥山と里山
日本には、「奥山」と「里山」という考え方があります。
「奥山」には山の神がおられると信じられており、人は勝手に奥山に入ったり、動植物をとったりしてはいけない場所です。奥山や神聖な山で狩りや木を伐採するときには、あらかじめ山の神にお祈りしてから森に入り、森の恵みをいただいたあとは、感謝の祈りをするという風習があります。椎葉村や西米良村など、日本の中山間地には今でも残っており、文化人類学や民俗学の研究素材にもなっています。
そこには、ある思想があります。『足るを知る文化』です。自分が使ったり食べたりする以上に余分にはいただかないという考え方です。森のものを根こそぎ取らない。常に次に来るもの(動物や人)のために残しておくことで、次世代にも残していくという山の文化です。常に必要な分だけを自然から分け与えられていることに感謝しながら生きてきた日本の考え方です。
一方、「里山」は、いわゆる「二次林」とよばれる林です。二次林というのは、木々が自然に育ってできた森(自然林)ではなく、暮らしのために一部の木だけを故意に残したり植えたりしてできた林や、人が木々を選び伐採したことで生態系が変わった林などのことです。また、二次林の中でも「里山」は、ほかの動植物とも共生できる多様性のある「雑木林」であることが多いです。「奥山」とは異なり、常に人が入り、その恵みをいただきながら寄り添ってきた場所です。里山は、シカやイノシシや鳥たちにとっても貴重な場所で、「食物連鎖」のバランスを取りながら、生物多様性の中、生きてきました。
このように里山は、奥山と違い、常に人が入り、その恵みをいただきながら、ほかの動植物と共に暮らすことができる「雑木林」で、里山では人はシカやイノシシや鳥なども一緒に生きてきました。里山があるからこそ生きることができる動植物も、実際にあります。
そして、この「奥山と里山」という日本人の考え方こそが、生物多様性を大切にする日本人らしい考え方で、世界が注目している持続可能な環境SDGsにつながります。
里山のヒミツ
「里山」は、人里離れた奥山とも、市街地とも異なり、人間の手が入りながらも、人間のみに管理されるわけではなく、自然が独自の生態系を生み出しながら、木と虫と動物と人とともに皆で作り上げてきた場所です。
里山には、人が必要な樹木が植えられ、かつては燃料や肥料の供給場所として、雑木林の里山は、人の暮らしに密着していました。具体的には、その土地に元々あった森林が伐られたあと、再生した木々が何度も収穫されていき、最後に再生力の強い樹種が残っていき、里山の雑木林の二次林をつくっていきます。本来、自生しているスダジイやシラカシなど繁茂する木々を伐採し、その代わりに人間の暮らしに必要なコナラやクヌギなどを植林します。すると、常緑の照葉樹の暗い森から落葉広葉樹の明るい光が差し込む森に変化することで、環境が変わり、他の樹木や生きものたちの活動の場ができるようになります。また、人の手が入ることで、雑木林の地面(林床)には、ササや低木類が刈られ、春の野草や野の花にとっての恰好の住み心地のよい環境になります。コナラやクヌギなどが芽吹いて葉を開き、光をさえぎってしまう前のわずかな早春の明るい林床には、キンランやヤブレガサ、各種スミレなどの花が咲き、美しいです。
里山は、自然を構成する森が改変された後に現れる二次的な自然ですが、アカマツやクヌギ、コナラなどの日陰で育ちにくかった下生えの草木が、その手入れにより命を吹き返し、新しい森の形を作り始めるのです。
このような里山のシステム(仕組み)がつくられたのは、縄文時代からですが、さらに人々の営みの場と生態系のバランスを保ち、持続可能な形で、より多様性を高めた関係を生み出したのは、古墳時代ともいわれています。
雑木林の女王コナラ
里山の雑木林の代表的な落葉樹「コナラ」は、温暖な人里近くの環境を好みます。山奥に生えるブナ林帯の樹木とくらべ、広い範囲で適応でき、繁殖力もあるからです。
1955(昭和30)年ごろまでは、里山の木々は、家庭用の薪や炭に使われる材として、また、椎茸栽培の「ホダ木」にするためなどに利用されてきました。
雑木林ではコナラなどの落ち葉が林床を埋め尽くしますが、それが腐葉土となり、土を肥やします。また、落ち葉を集め堆肥をつくり、畑などで利用しました。落ち葉の中にはカブトムシの幼虫などがたくさんいます。
このように人々は、里山を暮らしの中心にすえて、木々の伐採や、落ち葉かき、ササ刈りなどの手入れをすることで、雑木林を維持し、里山を中心に暮らしてきました。
残念ながら、最近では、電気や石油、ガスなどの普及により薪炭が暮らしに不可欠でなくなったことや、化学肥料の普及で落ち葉を堆肥に使われることが少なくなり、雑木林の手入れも行われなくなり、すっかり荒れてしまい、加えて都市開発や宅地開発等によって、生物多様性が高い里山どころか奥山まで減ってしまいました。
雑木林の女王、コナラは、切り株の根本から「わき芽」が伸びやすく、生長が早く、再生力が強いので、里山の中心的な存在でした。切り株の根本から萌芽し立ち上がった数本の幹のことを「ひこばえ」と呼び、切り株に「ひこばえ」が生えている姿を「株立ち」といい、雑木林には、株立ちしたコナラがたくさんあり、たくましい再生力で、人々の暮らしを支えてきました。
しかし、使われる量こそ減りましたが、いまでも薪や炭、椎茸栽培のホダ木など、宮崎県の奥地ではまだ利用され、里山が守られているところがあります。さらに里山を維持するために、最近では薪ストーブを普及させ薪のある暮らしを復活させようという考え方や、アウトドアブームがおこっています。薪やバーベキュー用の炭などを利用することで、里山を守ることにもつながります。
里山のコナラカフェ
ひなもりの森の女王コナラは、みやざき新巨樹100選の一本で、天然のものです。
ゴツゴツとした樹皮は、コナラが生きてきた時代を感じさせます。そして、昆虫たちが好むカフェでもあります。コナラの傷が入った樹皮からは樹液が出て、チョウやアリ、カナブンやカブトムシなど多くの虫たちが樹液をなめにやってきます。そして集まってきた虫たちを食べにやってくるヤマガラやカケスなどの鳥たちに、ドングリを食べるタヌキやネズミやイノシシにシカ。多くの動物たちがコナラと共生しています。
また、着生植物や共生する植物もたくさんあります。太く大きな枝や幹にはコケなどの地衣類や藻類なども住みつき、フジなどの、つる植物なども絡みついています。
まさにコナラは、様々な生物が共生している場をつくる木であり、ここに生物多様性を感じますね。
コナラクイズ
正解!
コナラのドングリは、細長く、大きさは1.6~2.2cmで、ドングリの中でもスマートな形をしています。ドングリの肌色は黒くて小粋な縞模様があり、美しいです。
ドングリは帽子のように見えるもの(殻斗)をかぶっていますが、殻斗にはブツブツとしたうろこ状の鱗片が付いています。形は、浅い杯の形です。
残りはイチイガシとスダジイのドングリです。どちらがどのドングリか見極めてみましょう。
残念!
コナラのドングリは、細長く、大きさは1.6~2.2cmで、ドングリの中でもスマートな形をしています。ドングリの肌色は黒くて小粋な縞模様があり、美しいです。
ドングリは帽子のように見えるもの(殻斗)をかぶっていますが、殻斗にはブツブツとしたうろこ状の鱗片が付いています。形は、浅い杯の形です。
残りはイチイガシとスダジイのドングリです。どちらがどのドングリか見極めてみましょう。