樹木の概要

コナラ

  • 樹種(じゅしゅ):コナラ
  • 学名(がくめい):Quercus serrata
  • 漢字(かんじ):小楢
  • 分類(ぶんるい):ブナ科コナラ属
  • 別名(べつめい):ホウソ、ハハソ、ナラ
  • 分布(ぶんぷ):北海道、本州、四国、九州(沖縄をのぞく日本全土)
  • 形態(けいたい):落葉広葉高木
  • 樹形(じゅけい):卵形
  • 樹高(じゅこう):15~20m
  • 雌雄(しゆう):雌雄同株
  • 花(はな):4~5月/雄花 約1.5mm(直径)/雄花の集まり(花序) 2~6cm(長さ)/雌花 約2mm(直径)
  • 実(み):9~10月/1.5~2cm(長さ)
  • 特徴(とくちょう):日当たりの良い山野に自生し、樹皮は濃灰色で、縦に不規則な裂け目が入り、 表面がガーター編み目のようになっているのが特徴。花の咲いた秋には、すぐにドングリが実る
みやざき新巨樹100選 夷守台のコナラ(宮崎県小林市)
コナラの精霊:妖精の女王 クエルタ

コナラの話

コナラはブナ落葉らくよう広葉こうようじゅで、たかさ15~20mになる高木こうぼくです。イチイガシやマテバシイとおなじブナ仲間なかまです。たりの山野さんやおおられますが、普通ふつうコナラはクヌギと同様どうようにほとんどが植林しょくりんで、椎茸しいたけの「ホダ」や薪炭しんたんなどに利用りようされていました。

コナラは再生力さいせいりょくつよく、根元ねもとちかくでって台木だいぎとし、ひこばえ(萌芽ほうが)をさせるということをかえし、ちょう期間きかんにわたりひとらしをささえてきました。

中国ちゅうごく地方ちほうでは薪炭しんたんやホダとして、コナラやクヌギのかぶから「ひこばえ」を利用りようするほか、兵庫県ひょうごけん北摂ほくせつ地方ちほうでは、コナラやクヌギを地上ちじょう1〜2mで伐採ばっさいし、樹幹じゅかんからの「ひこばえ」をかえ再生さいせいさせる方法ほうほう利用りようしています。とく兵庫県ひょうごけん北摂ほくせつ地方ちほうでは、このたかかぶを「台木だいぎ」とんでいます。

福島県ふくしまけん只見ただみは、日本にほん有数ゆうすう雪国ゆきぐにですが、ふゆにコナラやブナ、ミズナラの伐採ばっさいおこないます。1mよりすこたかいところでり、もったゆき利用りようして搬出はんしゅつおこなっていました。1~2mのところでると、なつあいだ光合成こうごうせいめた養分ようぶんのこっていて、翌年よくとしはるになったらヒコバエがどんどん再生力さいせいりょくたかくなります。雪国ゆきぐにではこのような台木だいぎのこすやりかたを「あがりこ」とび、いまでもおこなっているそうです。

ひなもりだいにある「みやざき新巨樹しんきょじゅ100せんのコナラ」は、全体ぜんたいたにうえかたむいてしげっています。まったくった形跡けいせきがないので、天然てんねんだとおもわれます。このがけきわ発芽はつがしたことで、天然てんねんのこることができたとおもわれます。うえほうにはヒノキがありえだばす余裕よゆうがなかったため、たにほうほか植物しょくぶつ枝葉えだはしげっていないところにかってえだばしたため、このようなゆがんだ樹形じゅけいになったとかんがえられます。

成長せいちょう過程かていまわりの環境かんきょう影響えいきょうした結果けっかこういうかたちになったということや、コナラの南限なんげん屋久島やくしまふく南九州みなみきゅうしゅうであり、標高ひょうこうたかいのでおおきなになりえたということ、また、樹形じゅけいっすぐではなく、この利用りようするのにてきさないものだったことなどが、こののこった要因よういんだとおもわれます。

このコナラには、たくさんの着生ちゃくせい植物しょくぶついていますが、このようにひとつの空間くうかんなかにたくさんの生物せいぶつ共存きょうぞんして生活せいかつできることを「生物せいぶつ様性ようせいたかい」といいます。

生物せいぶつ共存きょうぞんには、共生関係きょうせいかんけいきょう争関係そうかんけい生関係せいかんけいなどがありますが、着生ちゃくせい植物しょくぶつのほとんどが共生きょうせいです。ただ場所ばしょりているだけですから、腐朽菌ふきゅうきん問題もんだいはありますが、基本的きほんてきにコナラには有害ゆうがい影響えいきょうおよぼしません。

この生物せいぶつ様性ようせいたかく、包容力ほうようりょくのあるこの巨木きょぼく姿すがたて、生物せいぶつ生物せいぶつ共存きょうぞん関係かんけいかんることができます。

みしめながら、ふゆ雑木林ぞうきばやしあるいてみましょう。ゴツゴツしたはだのコナラ。コナラにきついたフジのつるもえます。つるが方法ほうほうは、見方みかたによってちがうのですが、フジの場合ばあい、つるのびるほうかって、ひだりまわり(時計とけい反対はんたいまわり)にいています。

ほかのみきを、テイカカズラやツタウルシのように付着根ふちゃくこん付着盤ふちゃくばんでしがみつきながらよじのぼっていく植物しょくぶつもあります。付着根ふちゃくこん付着盤ふちゃくばん養分ようぶんいとるわけではないので、生植物せいしょくぶつではありません。ツタは、きひげの変化へんかした吸盤きゅうばんがあり、これでしがみついていきます。

みやざき新巨樹100選 夷守台のコナラ(宮崎県小林市)
付着根
付着盤の吸盤

コナラの由来ゆらい

コナラはミズナラなど、ほかのナラの仲間なかまよりたかさもちいさいことが、由来ゆらいです。ちなみにミズナラは、別名べつめいをオオナラといい、みき直径ちょっけい2mにたっします。

コナラを観察しよう!

コナラのみき樹皮じゅひ

みきふとさは直径ちょっけい50~60cmほどで、みきは、まっすぐにびるクヌギとことなり、ゴツゴツとがりながらびます。

樹皮じゅひ灰色はいいろか、はい褐色かっしょくで、たてあさ不規則ふきそくがあります。老木ろうぼくではふかけ、筋状すじじょう隆起りゅうきします。表面ひょうめんがセーターのガーターのようです。

えだみきは、再生力さいせいりょくつよく、むかしから利用りようしてきました。

縦に浅い不規則な裂け目があるコナラの樹皮

観察かんさつしてみよう!

単葉たんよう互生ごせいし、ながさが5~15cm、はばが4~6cmで、先端せんたんするどとがり、へりにはおおきなとがったギザギザ(鋸歯きょし)があります。おもてみどりですが、うらはややしろっぽいです。

サクラとおなじころに開花かいかしますが、はる芽吹めぶきのいろ銀色ぎんいろがかっており、先端せんたんあかみがほんのりとくわわり、やさしいかんじです。落葉樹らくようじゅなので、はる木全体きぜんたい若葉わかばのため、しろっぽくえ、たいへんきれいです。

は、若葉わかばのころはぎん白色はくしょく絹毛きぬげつつまれていますが、しだいにちて無毛むもうになり、うらすこのこ程度ていどになります。

葉柄ようへいながく、1cmほどあり、ミズナラと区別くべつがつきます。

コナラの葉(左:葉の表 右:葉の裏)

特徴的とくちょうてき冬芽とうが

ふゆ休眠とうみん状態じょうたいにあった冬芽とうがは、はるにふたたび芽吹めぶくために準備じゅんびされたものです。をていねいにりたたみ、ふゆさむさや乾燥かんそう病害虫びょうがいちゅうから冬芽とうがまもるための工夫くふうをしています。

コナラの冬芽とうが特徴的とくちょうてきしずくかたちで、ウロコのようなかたかわ芽鱗がりん)につつまれており、まるであつ防寒着ぼうかんぎているかのようです。

春一番はるいちばんき、さむさがゆるみはじめる3がつわりから4がつのはじめにかけて、コナラの冬芽とうがすこしずつかたじていた芽鱗がりんひらきはじめ、なかからおさな芽吹めぶいてきます。

冬芽とうがからかおしたうす緑色みどりいろをしたおさなには、しろ絹毛きぬげがみっしりとえていて、全体ぜんたいしろっぽいです。銀色ぎんいろがかった緑褐色りょくかっしょくは、やがておおきく成長せいちょうしていきますが、同時どうじに、あたらしいえだもどんどんびて、光合成こうごうせいちからづよくはじめます。

コナラの枝の先端には、頂芽といくつかの芽(頂生側芽)が集まっている。いちばん大きいのが頂芽だ。やがてすべての冬芽から新しい葉が、芽を包んでいる褐色の芽鱗をおしのけて芽吹く。寒さや乾燥、害虫から身を守るため、葉には細かい毛がたくさん付いている
コナラの若い葉と雄花

コナラの落葉らくよう

雑木林ぞうきばやし構成こうせいする主要しゅよう樹木じゅもくのひとつコナラは、あき紅葉こうよう黄葉こうようして、とす落葉樹らくようじゅです。クヌギやコナラは、あきれた時点じてんでは、ちず、いつまでも茶色ちゃいろのこっており、はるあたらしいるころに落葉らくようします。腐葉土ふようどとなり、そのなかでたくさんの生物せいぶつきており、もりゆたかにします。

落ち葉は腐葉土になります

コナラの雄花おばな雌花めばな

コナラは、1ぽん雌花めばな雄花おばな別々べつべつかせます(雌雄同株しゆうどうしゅ)。

コナラの冬芽とうがには、はなになる花芽はなめ)と、になる葉芽ようが)があります。4がつ葉芽ようがひらいてあたらしいえだばすと同時どうじに、花芽はなめひらき、はなかせます。

雄花おばなは、あたらしいえだもと部分ぶぶんになってぶらがるようにびます。花序かじょながさは2~6cmほどです。

また、雌花めばなは、あたらしいえださきにあるあたらしい葉腋ようえき)に数個すうこきますが、ドングリにまでそだつのは、ひとつかふたつだけです。

雄花おばな雌花めばなはなびら(花弁かべん)らしきものはなく、やがてドングリの殻斗かくとになる総苞そうほうから、しべ(柱頭ちゅうとう)がしてきます。コナラは、かぜ花粉かふんとどけてもらって受粉じゅふんする風媒ふうばいです。おなじドングリの仲間なかまでもマテバシイは、むし花粉かふんはこんでもらう虫媒ちゅうばいです。

雌花めばなは、最初さいしょちいさくて、まったく目立めだちませんが、受粉じゅふんしたあと、6がつごろには、殻斗かくとつつまれたができます。そして7がつごろには、殻斗かくとなかから緑色みどりいろのドングリがかおし、9がつごろには、殻斗かくとをかぶったみどりいろのドングリとなり、10がつじゅくして黒褐色こくかっしょくになります。

コナラの雄花
雄花が咲き誇る(4月)
殻斗に包まれた実(6月)
緑色のドングリがなる(9月)

コナラの観察かんさつしよう

ナラやカシのをドングリといいますが、コナラの代表的だいひょうてきなドングリのひとつです。

コナラのドングリは、細長ほそながく、おおきさは1.5~2.0cmです。ドングリの肌色はだいろくろくて小粋こいき縞模様しまもようがあり、うつくしいです。

ドングリは帽子ぼうしのようにえるもの(殻斗かくと)をかぶっており、殻斗かくとにはブツブツとした鱗片りんぺんいています。かたちは、あささかずきかたちです。

コナラのドングリは「一年いちねんり」で、4がつはなき、そのとしあき果実かじつ(ドングリ)がじゅくします。

ドングリは落下らっかすると、すぐにして、からだを固定こていします。その状態じょうたいふゆし、はるになるとばしはじめ、本葉ほんばひらきます。成木せいぼくには2~3ねんおきに大量たいりょうのドングリがみのります。ドングリは、とり動物どうぶつたちの貴重きちょう食料しょくりょうとなります。

コナラのドングリは細長い形をしている
2~3年おきに実るコナラのドングリ
春になると芽を伸ばすドングリ

ドングリのなる

ドングリはブナ樹木じゅもくける堅果けんかのことで、ドングリがなるは、日本にほん自生じせいするブナ植物しょくぶつで、全部ぜんぶで22しゅといわれています。落葉広葉樹らくようこうようじゅのブナ、コナラ、クリ、クヌギなど9しゅと、常緑じょうりょく広葉樹こうようじゅのイチイガシ、シラカシ、アカカシ、ウバメガシ、スダジイなど13しゅあります。

のなりかたには、コナラやイチイガシのようにはるはなき、あきにはじゅくす「一年いちねんり」と、はる開花かいか受粉じゅふんし、じっくりと成熟せいじゅくし、翌年よくとしあきになる「二年にねんり」があります。マテバシイやスダジイ、クヌギなどは二年にねんりです。

なぜによって、このようなちがいがあるのでしょうか?不思議ふしぎですね。はやじゅくすと動物どうぶつべられる危険きけんすこしはるからとか、ぎゃくにゆっくりじゅくすことで、特定とくていむし動物どうぶつからべられないようにしているなど、いろいろなことがかんがえられますね。

また、ドングリには大豊作だいほうさくとし不作ふさくとし周期しゅうきがあります。ドングリはさとのイノシシやタヌキ、ネズミ、ゾウムシなどのむしたちなどにべられますが、すべてべつくしてしまわれると、すことができなります。かり毎年まいとし豊作ほうさくにすると、エサが豊富ほうふになり動物どうぶつえ、せっかくをつけてもほとんどべられてしまいます。そこで、をあまりけないとし不作ふさくとし)をもうけることで、エサ不足ふそく動物どうぶつ昆虫こんちゅうらすことができます。そして、その翌年よくとし今度こんどはたくさんドングリをみのらせることで、動物どうぶつべられずにすことができます。しゅをつないでいくための知恵ちえですね。植物しょくぶつって、本当ほんとうにかしこいですね。

たくさんあるドングリ

コナラと人とのかかわり

縄文じょうもん時代じだい主食しゅしょくだったドングリ

ドングリをみのらせる木々きぎは、その果実かじつりょうおおさから、イノシシやクマ、シカなどのエサにもなりましたが、人間にんげんにとっても貴重きちょう食糧しょくりょうでした。縄文じょうもん遺跡いせきからもドングリがたくさん確認かくにんされており、いかにドングリがクルミやトチのとともに、当時とうじから大切たいせつべものであったかがかっています。

縄文じょうもん時代じだいからは「すりいし」が出土しゅつどしています。縄文じょうもん時代じだいのクッキーは、「縄文じょうもんクッキー」とよばれ、当時とうじはお菓子かしのクッキーというよりも、野生やせい動物どうぶつにくなどをぜて、ハンバーグのようにしてべていたといわれています。

縄文じょうもん時代じだい料理りょうり使つかわれていたドングリは、アクきが必要ひつようないクリやシイ、ブナばかりではなかったことがかっています。アクのあるナラやアカガシなどのドングリを、アクやゴミを同時どうじのぞく「みずさらし」の方法ほうほうで、料理りょうりしていました。愛知県あいちけん千石遺跡せんごくいせきではたくさんのコナラのドングリの貯蔵ちょぞう確認かくにんされています。

スダジイなどのシイるいやマテバシイなどは、アクがすくないので、そのままるだけでべることができますが、コナラのドングリはしぶくてアクがつよいので、アクきして使つかいます。アクの主成分しゅせいぶんはタンニンで、少量しょうりょうなら整腸せいちょう作用さようがありますが、たくさんるとおなかをこわします。

最近さいきん、カフェなどでドングリ―コーヒーをむことができることがありますが、これはアクきしたドングリをフライパンで20~30ふんほど焙煎ばいせんし、水分すいぶんばし、コーヒー豆色まめいろになったら、ミルでいてこなにし、コーヒーとおなじようにれたものです。

すり石
煎るだけで食べられるシイ類やマテバシイのドングリ

ドングリのアクきの仕方しかた①[従来じゅうらいがた

アクきが必要ひつようだがいちねんりでかずおおいコナラやアラカシのドングリがおお使つかわれており、「みずさらしの方法ほうほう」でアクきをして利用りようされていたことがかっています。

みずさらしのアク

① いしうすのなかからごとつぶす

② いしうすにみずれてからなどのゴミやアクなどのどくなが

③ ②をかえ

④ デンプンだけがのこ

⑤ 土器どきれて

ドングリのアクきの仕方しかた②[現代げんだいふう

① 3日間かかんみずけ、いたりのぞく。いたにはむしがいたり、なかくさっていたりしている

② からり、むしころす。また、すことで、あとに、やわらかさがのこ

③ 2日間かかんてん日干ぴぼしをする

④ から薄皮うすかわりのぞき、重曹じゅうそうを1キロあたり2スプーンれたこぼす。重曹じゅうそうりのえながら5かいおなじことをかえ

コナラとらす

コナラは、九州きゅうしゅう内陸部ないりくぶ本州ほんしゅうでは「里山さとやま」の主役しゅやくともいえる落葉樹らくようじゅです。

人里ひとざとちかくにいまでものこっている雑木林ぞうきばやしは、「里山さとやま」とよばれ、まきすみなどのざい確保かくほしたり、利用りようするために維持いじされてきた、日本人にほんじんにとってなくてはならないもりでした。そして、コナラは落葉樹らくようじゅでは里山さとやま代表的だいひょうてき樹木じゅもくなのです。

ナラは漢字かんじで「なら」とき、つくりの「しゅう」は酋長しゅうちょうなど「おさめるもの」という意味いみです。としての風格ふうかくがあります。英語えいごでは「オーク」とばれ、もりおう女王じょおうとされています。

コナラは、ミズナラより環境かんきょうへの適応性てきおうせいたかく、北海道ほっかいどうから九州きゅうしゅうまで広域こういき分布ぶんぷしており、宮崎県みやざきけんでもブナたいから海岸線かいがんせんまでひろ里山さとやま分布ぶんぷしています。コラナは伐採ばっさいしてもかぶから「ひこばえ」を形成けいせいし、再生能力さいせいのうりょくつよいので、かつては薪炭材しんたんざい椎茸しいたけのホダとして利用りようされ、里山さとやま雑木林ぞうきばやしにはコナラりん二次にじりんとしてつくられていました。

コナラのざいかたく、ざいとしての利用りよう価値かちたかいのですが、材質ざいしつ変化へんかおおきく、水分すいぶんけにくいので乾燥かんそうしにくく、うまく乾燥かんそうさせないとれがはいりやすかったり、くさりやすかったり、加工かこうしにくかったりします。利用用途りようようとかぎられていました。しかし、近年きんねんでは、乾燥かんそうなどの製材せいざい技術ぎじゅつ発達はったつし、フローリングざい家具かぐなどに商業しょうぎょう利用りようされています。

また、コナラのまきは、もちがいので、まきストーブなどでたいへんこのまれ、アウトドアでも人気にんきです。樹皮じゅひは、タンニンをおおくふくみ、染色せんしょくにも利用りようされます。

椎茸栽培のホダ木
ひこばえ

生物せいぶつ様性ようせい里山さとやまのヒミツ

生物せいぶつ様性ようせい」とは、球上きゅうじょうには多様たよう生物せいぶつ動植物どうしょくぶつなど)が生息せいそくしていることをいいます。生態系せいたいけい多様性たようせいがベースにあり、そのうえしゅ多様性たようせい遺伝的いでんてき多様性たようせいから構成こうせいされます。

みなさんの学校がっこうでもおなじですよね。いろいろなどもたちがいて、それぞれちがっていてたのしいですよね。

それとおなじで、球上きゅうじょうには、はだいろことなるたくさんの人種じんしゅがそれぞれ大切たいせつなのとおなじように、また、おな民族みんぞくでもかんがかたまれそだった環境かんきょうによりかたかんがかたわります。おなであっても、すべて個性こせいがあり、かたち生長せいちょう仕方しかたことなります。そして、遺伝子いでんし自体じたい一人ひとり一人ひとり変化へんかしていきます。植物しょくぶつ動物どうぶつ世界せかいでもいろいろな種類しゅるい生物せいぶつがいてはじめて、バランスがとれます。いのち根源こんげんはこの多様性たようせいにあります。個性こせい大切たいせつにすることは、生命力せいめいりょくはぐくむことになります。

あらゆる生物せいぶつ一緒いっしょにいるという多様性たようせいこそが、生命力せいめいりょくみなもとであり、よりきゅう環境かんきょうにはかせないことなのです。

日本にほんは、1992(平成へいせい4)ねんきゅうサミットで生物せいぶつ様性条約ようせいじょうやく署名しょめいし、世界せかいで18番目ばんめ条約じょうやく締結ていけつしました。しかし、貝類かいるいしょう生物せいぶつなどの宝庫ほうこであった干潟ひがたてられたり、奥山おくやまはいんで乱獲らんかくしたり、開発かいはつなどで貴重きちょうもりこわれたり、おおくのもり里山さとやまがほったらかしにされれないがために、もり生態系せいたいけいのバランスがくずれてしまったり、外来生物がいらいせいぶつ化学物質かがくぶしつなどで生態系せいたいけい混乱こんらんしたりして、日本にほんの、いやきゅう全体ぜんたい悲惨ひさん状況じょうきょうは、悪化あっか一途いっとをたどっています。

そのようななかじつは、古来こらいより生物せいぶつふくめた自然しぜんに「畏敬いけいねん」をいだき、ってきた日本人にほんじん独特どくとくかんがかた大切たいせつで、じつ生物せいぶつ様性ようせい思想しそうそのものなのです。

奥山おくやま里山さとやま

日本にほんには、「奥山おくやま」と「里山さとやま」というかんがかたがあります。

奥山おくやま」にはやまかみがおられるとしんじられており、ひと勝手かって奥山やまおくはいったり、動植物どうしょくぶつをとったりしてはいけない場所ばしょです。奥山おくやま神聖しんせいやまりや伐採ばっさいするときには、あらかじめやまかみにおいのりしてからもりはいり、もりめぐみをいただいたあとは、感謝かんしゃいのりをするという風習ふうしゅうがあります。椎葉村しいばそん西米良村にしめらそんなど、日本にほん中山間ちゅうさんかんにはいまでものこっており、文化ぶんか人類学じんるいがく民俗学みんぞくがく研究けんきゅう素材そざいにもなっています。

そこには、ある思想しそうがあります。『るを文化ぶんか』です。自分じぶん使つかったりべたりする以上いじょう余分よぶんにはいただかないというかんがかたです。もりのものをこそぎらない。つねつぎるもの(動物どうぶつひと)のためにのこしておくことで、次世代じせだいにものこしていくというやま文化ぶんかです。つね必要ひつようぶんだけを自然しぜんからあたえられていることに感謝かんしゃしながらきてきた日本にほんかんがかたです。

一方いっぽう、「里山さとやま」は、いわゆる「二次林にじりん」とよばれるはやしです。二次林にじりんというのは、木々きぎ自然しぜんそだってできたもり自然林しぜんりん)ではなく、らしのために一部いちぶだけを故意こいのこしたりえたりしてできたはやしや、ひと木々きぎえら伐採ばっさいしたことで生態系せいたいけいわったはやしなどのことです。また、二次林にじりんなかでも「里山さとやま」は、ほかの動植物どうしょくぶつとも共生きょうせいできる多様性たようせいのある「雑木林ぞうきばやし」であることがおおいです。「奥山おくやま」とはことなり、つねひとはいり、そのめぐみをいただきながらよりってきた場所ばしょです。里山さとやまは、シカやイノシシやとりたちにとっても貴重きちょう場所ばしょで、「食物しょくもつ連鎖れんさ」のバランスをりながら、生物せいぶつ多様性たようせいなかきてきました。

このように里山さとやまは、奥山おくやまちがい、つねひとはいり、そのめぐみをいただきながら、ほかの動植物どうしょくぶつともらすことができる「雑木林ぞうきばやし」で、里山さとやまではひとはシカやイノシシやとりなども一緒いっしょきてきました。里山さとやまがあるからこそきることができる動植物どうしょくぶつも、実際じっさいにあります。

そして、この「奥山おくやま里山さとやま」という日本人にほんじんかんがかたこそが、生物せいぶつ多様性たようせい大切たいせつにする日本人にほんじんらしいかんがかたで、世界せかい注目ちゅうもくしている持続じぞく可能かのう環境かんきょうSDGsにつながります。

焼畑に火入れする前に、山の神様に祈りを捧げる村人(宮崎県椎葉村)
焼畑の風景(宮崎県椎葉村)

里山さとやまのヒミツ

里山さとやま」は、人里離ひとざとはなれた奥山おくやまとも、市街地しがいちともことなり、人間にんげんはいりながらも、人間にんげんのみに管理かんりされるわけではなく、自然しぜん独自どくじ生態系せいたいけいしながら、むし動物どうぶつひととともにみなつくげてきた場所ばしょです。

里山さとやまには、ひと必要ひつよう樹木じゅもくえられ、かつては燃料ねんりょう肥料ひりょう供給きょうきゅう場所ばしょとして、雑木林ぞうきばやし里山さとやまは、ひとらしに密着みっちゃくしていました。具体的ぐたいてきには、その土地とち元々もともとあった森林しんりんられたあと、再生さいせいした木々きぎ何度なんど収穫しゅうかくされていき、最後さいご再生力さいせいりょくつよ樹種じゅしゅのこっていき、里山さとやま雑木林ぞうきばやし二次林にじりんをつくっていきます。本来ほんらい自生じせいしているスダジイやシラカシなど繁茂はんもする木々きぎ伐採ばっさいし、そのわりに人間にんげんらしに必要ひつようなコナラやクヌギなどを植林しょくりんします。すると、常緑じょうりょく照葉樹しょうようじゅくらもりから落葉広葉樹らくようこうようじゅあかるいひかりもり変化へんかすることで、環境かんきょうわり、ほか樹木じゅもくきものたちの活動かつどうができるようになります。また、ひとはいることで、雑木林ぞうきばやし地面じめん林床りんしょう)には、ササや低木類ていぼくりんられ、はる野草やそうはなにとっての恰好かっこう心地ここちのよい環境かんきょうになります。コナラやクヌギなどが芽吹めぶいてひらき、ひかりをさえぎってしまうまえのわずかな早春そうしゅんあかるい林床りんしょうには、キンランやヤブレガサ、各種かくしゅスミレなどのはなき、うつくしいです。

里山さとやまは、自然しぜん構成こうせいするもり改変かいへんされたあとあらわれる二次的にじてき自然しぜんですが、アカマツやクヌギ、コナラなどの日陰ひかげそだちにくかった下生したばえの草木くさきが、その手入ていれによりいのちかえし、あたらしいもりかたちつくはじめるのです。

このような里山さとやまのシステム(仕組しくみ)がつくられたのは、縄文じょうもん時代じだいからですが、さらに人々ひとびといとなみの生態系せいたいけいのバランスをたもち、持続可能じぞくかのうかたちで、より多様性たようせいたかめた関係かんけいしたのは、古墳時代こふんじだいともいわれています。

宇納間の炭焼の窯出し風景(宮崎県美郷町)
山里の猟師(宮崎県美郷町)
森の神事(宮崎県美郷町)

雑木林ぞうきばやし女王じょうおうコナラ

里山さとやま雑木林ぞうきばやし代表的だいひょうてき落葉樹らくようじゅ「コナラ」は、温暖おんだん人里近ひとざとちかくの環境かんきょうこのみます。山奥やまおくえるブナ林帯りんたい樹木じゅもくとくらべ、ひろ範囲はんい適応てきおうでき、繁殖力はんしょくりょくもあるからです。

1955(しょう30)ねんごろまでは、里山さとやま木々きぎは、家庭用かていようまきすみ使つかわれるざいとして、また、椎茸しいたけ栽培さいばいの「ホダ」にするためなどに利用りようされてきました。

雑木林ぞうきばやしではコナラなどの林床りんしょうくしますが、それが腐葉土ふようどとなり、つちやします。また、あつ堆肥たいひをつくり、はたけなどで利用りようしました。なかにはカブトムシの幼虫ようちゅうなどがたくさんいます。

このように人々ひとびとは、里山さとやまらしの中心ちゅうしんにすえて、木々きぎ伐採ばっさいや、かき、ササりなどの手入ていれをすることで、雑木林ぞうきばやし維持いじし、里山さとやま中心ちゅうしんらしてきました。

残念ざんねんながら、最近さいきんでは、電気でんき石油せきゆ、ガスなどの普及ふきゅうにより薪炭しんたんらしに不可欠ふかけつでなくなったことや、化学かがく肥料ひりょう普及ふきゅう堆肥たいひ使つかわれることがすくなくなり、雑木林ぞうきばやし手入ていれもおこなわれなくなり、すっかりれてしまい、くわえて都市開発としかいはつ宅地開発等たくちかいはつとうによって、生物せいぶつ多様性たようせいたか里山さとやまどころか奥山おくやままでってしまいました。

雑木林ぞうきばやし女王じょうおう、コナラは、かぶ根本ねもとから「わき」がびやすく、生長せいちょうはやく、再生力さいせいりょくつよいので、里山さとやま中心的ちゅうしんてき存在そんざいでした。かぶ根本ねもとから萌芽ほうがあががった数本すうほんみきのことを「ひこばえ」とび、かぶに「ひこばえ」がえている姿すがたを「株立かぶたち」といい、雑木林ぞうきばやしには、株立かぶたちしたコナラがたくさんあり、たくましい再生力さいせいりょくで、人々ひとびとらしをささえてきました。

しかし、使つかわれるりょうこそりましたが、いまでもまきすみ椎茸しいたけ栽培さいばいのホダなど、宮崎県みやざきけん奥地おくちではまだ利用りようされ、里山さとやままもられているところがあります。さらに里山さとやま維持いじするために、最近さいきんではまきストーブを普及ふきゅうさせまきのあるらしを復活ふっかつさせようというかんがかたや、アウトドアブームがおこっています。まきやバーベキューようすみなどを利用りようすることで、里山さとやままもることにもつながります。

雑木林の女王コナラ
落ち葉の上で芽を出すドングリ
アウトドアブームが里山を守ることにもつながっている
ひなもりの森の中には、キャンプスペースもあり、森の暮らしと地球、SDGsを考える場所としても大切ですね

里山さとやまコナラカフェ

ひなもりのもり女王じょうおうコナラは、みやざき新巨樹しんきょじゅ100せん一本いっぽんで、天然てんねんのものです。

ゴツゴツとした樹皮じゅひは、コナラがきてきた時代じだいかんじさせます。そして、昆虫こんちゅうたちがこのむカフェでもあります。コナラのきずはいった樹皮じゅひからは樹液じゅえきて、チョウやアリ、カナブンやカブトムシなどおおくのむしたちが樹液じゅえきをなめにやってきます。そしてあつまってきたむしたちをべにやってくるヤマガラやカケスなどのとりたちに、ドングリをたべべるタヌキやネズミやイノシシにシカ。おおくの動物どうぶつたちがコナラと共生きょうせいしています。

また、着生ちゃくせい植物しょくぶつ共生きょうせいする植物しょくぶつもたくさんあります。ふとおおきなえだみきにはコケなどの地衣ちいるい藻類そうるいなどもみつき、フジなどの、つる植物しょくぶつなどもからみついています。

まさにコナラは、様々さまざま生物せいぶつ共生きょうせいしているをつくるであり、ここに生物多様性せいぶつたようせいかんじますね。

ドングリを食べるネズミ
食べ物を探すイノシシの親子

コナラクイズ

コナラのドングリはどれ?

正解!

コナラのドングリは、細長ほそながく、おおきさは1.6~2.2cmで、ドングリのなかでもスマートかたちをしています。ドングリの肌色はだいろくろくて小粋こいき縞模様しまもようがあり、うつくしいです。

ドングリは帽子ぼうしのようにえるもの(殻斗かくと)をかぶっていますが、殻斗かくとにはブツブツとしたうろこじょう鱗片りんぺんいています。かたちは、あささかずきかたちです。

のこりはイチイガシとスダジイのドングリです。どちらがどのドングリか見極みきわめてみましょう。

残念!

コナラのドングリは、細長ほそながく、おおきさは1.6~2.2cmで、ドングリのなかでもスマートかたちをしています。ドングリの肌色はだいろくろくて小粋こいき縞模様しまもようがあり、うつくしいです。

ドングリは帽子ぼうしのようにえるもの(殻斗かくと)をかぶっていますが、殻斗かくとにはブツブツとしたうろこじょう鱗片りんぺんいています。かたちは、あささかずきかたちです。

のこりはイチイガシとスダジイのドングリです。どちらがどのドングリか見極みきわめてみましょう。

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