樹木の概要
クリ
- 樹種(じゅしゅ):クリ
- 学名(がくめい):Castanea crenata
- 漢字(かんじ):栗
- 分類(ぶんるい):ブナ科クリ属
- 別名(べつめい):シバグリ、ノグリ
- 分布(ぶんぷ):北海道西南部、本州、四国、屋久島南限の九州
- 形態(けいたい):落葉広葉高木
- 樹形(じゅけい):卵形
- 樹高(じゅこう):15~20m
- 雌雄(しゆう):雌雄同株・雌雄異花
- 花(はな):6月/雄花2.5mm(直径)/雄花の集まり(花序)10~15cm/雌花3mm(直径)
- 実(み):秋(9~10月)/5~11cm(直径)
- 特徴(とくちょう):樹皮は淡い黒褐色をしており、縦に裂け目がある。 花は雌雄同株で、雄花は、白っぽく長く垂れている。その付け根に、小さな雌花を咲かせる。クリの実が黒っぽいことから「黒実(くろみ)」が転じて「クリ」と呼ばれるようになったという説がある
クリの話
世界中で愛される栗の実が生える木
独特の香りに、上品な甘み、そして何よりもボリューム。クリの実は、焼き栗、栗きんとん、マロングラッセなど世界中で愛されてきた。今では200種以上の栽培用の品種があります。
長くて鋭いイガに包まれていて、秋になるとイガが茶色になり、やがてぱっくりと4つに割れ、中から褐色のつやつやしたクリが3個、顔をのぞかせる、まさに木の実の王子さまです。
クリの実が黒っぽいことから「黒実」が転じて「クリ」と呼ばれるようになったという説や、クリとはそもそも石という意味で、実の堅い殻をクリと呼んだという説、また、朝鮮語の「栗」を意味する「Kul」から名付けられたという説など諸説あります。
クリを観察しよう!
幹を観察してみましょう
高さが15〜20mの落葉する高木で、幹の直径は1mになることがあります。天然のクリは、北海道の日高地方より南、本州、四国、九州の屋久島を南限として、丘陵や山地に生育します。
クリの樹皮
樹皮は灰色がかった黒色で、やや深く縦に割れ目が入っています。
クリの春
クリの冬芽は、2月になると、ほころびはじめます。うす緑色の葉が生え、花になる穂も伸びはじめます。
鋸歯まで緑色のクリの葉
クリの葉は、長い楕円形で、先端は尖り、葉もとは丸い形です。葉の縁には、緑色の鋭いギザギザ(鋸歯)があり、針のように尖っています。鋸歯の先まで緑色をしており、よく似たクヌギの葉と区別ができます。
葉は単葉で互生し、葉の裏には柔らかい毛と腺点があり、淡い緑色です。
葉が緑色のうちにイガが割れ、クリの実がこぼれ落ち、その後、葉は黄色に色づき、散り落ちはじめます。
花を観察してみましょう
冬芽は2月にほころび、5月になると、小花が房状に咲きはじめます。花には独特の香りがあります。
6~7月、木全体をおおうように長さ10~15㎝の長い雄花の穂が出てきて、あたりに強い匂いをまきちらします。よく見ると、雄花の穂のもとの方に、雌花がひっそりと3つほどかたまって咲いており、トゲのある緑色の総苞(イガのもと)に包まれています。総苞は、やがてトゲトゲのイガの付いた殻斗となります。
クリの雄花の長い穂
長い雄花の穂には、1本に約150個もの雄花が付いていて、大量の花粉を撒き散らしています。
花粉は、風にのり、雌しべにたどりつこうとします。風のほか雨水や昆虫が、雌花に雄花の花粉を運びます。
できるだけ雌しべにたくさんの花粉が付いた方が、実がよくでるからですね。
雄花の穂は、雌花が受粉したあと、落ちてしまいます。
クリの実とイガ
やがて枯れた雌花の付け根で、クリの実が育っていきます。
7月に実ができあがると、そのまわりを総苞(イガのもと)が包みます。この時点では、トゲはまだ、やわらかいです。
8月、実がさらに大きくなり、イガの先が硬くなってきます。
9月、いよいよトゲトゲのイガ(殻斗)になります。イガは、最初は緑色でしたが、だんだんと茶色に熟していきます。
そして、10月、パカッと割れたイガの中から大きな三つのクリの実が顔をのぞかせます。イガを触ると、尖っていてとても痛いです。
人間が中のクリの実をとる場合、専用の道具を使うなどの工夫が必要です。
また、クリの実は渋皮といわれる種皮にくるまれており、イガのよろいと同じように、渋く苦い味で、動物や虫たちから実を守るために役立っています。
クリと人とのかかわり
縄文時代から食糧として大切にされてきたクリ
クリの実は、ミネラルいっぱいで、ビタミンがずばぬけて多く、クリを1日に6個か7個食べると、おとな一日あたりに必要な栄養を満たすことができます。
クリは縄文時代から近代まで、大切な食料として大事にされてきました。縄文人たちは、ブナやコナラが生えた豊かな森を切り開き、集落をつくっていました。そして、クリやクルミだけは切らずに残し、集落のまわりにクリ林を作り管理し、クリの実を食料として栽培していたんですね。整然と並んだクリの木を植えた跡が出土しています。
弥生時代になると、大粒のクリも盛んに栽培されており、ききんに備えて植えたことが、「日本書紀」など古い書物にも書かれています。
さらに近年になると、小粒のシバグリだけでなく大粒の丹波グリが栽培されるようになり、お菓子などに使われるようになりました。
クリの実をそのまま焼いたり湯がいたりするほか、栗ご飯、栗おこわ、煮しめ、栗きんとん、焼き栗、栗の渋皮煮、栗ようかんや栗蒸し羊羹、栗しぼりなどの和菓子や、マロングラッセやモンブラン(ケーキ)などの洋菓子、らくがんなどの干菓子など、世界中で愛されています。
五千年前の日本の縄文遺跡からかなり手のこんだ縄文グリのクッキーが発掘されています。どうやら焼く前に酵母を使って発酵までさせていたことが分かっています。
建築や土木の建材として使用されてきたクリ
樹木は耐水性があり、縄文時代には建築材として使われていました。
クリの木の材はとても丈夫で、縄文時代の遺跡でも数千年前のクリの木の柱が出土しているなど、腐りにくい資材として、建築材や土木資材などに使われてきました。かつてはクリ板の屋根や、東日本では丸木舟にも使われてきました。
広大なクリ林が破壊されたのは、明治5年に鉄道が開通してからです。その頃から昭和の半ばまで、堅くて割れにくく、腐りにくく耐久性に優れたクリ材は、日本全国の鉄道の枕木として使用されました。一時期は全国の枕木の90パーセントがクリの材となるほど大量のクリの木を伐採し、その後、使い捨てされてしまったという歴史があります。
クリクイズ
正解!
クリの葉
クリの葉は、長い楕円形で、もとは丸く、針のように尖っています。葉の縁には、緑色の鋭いギザギザ(鋸歯)があり、鋸歯の先まで緑色をしており、よく似たクヌギの葉と区別ができます。
葉は単葉で互生し、葉の裏は柔らかい毛や腺点があり、淡緑色です。
クリの実だけでなく葉の方にも視線を向けてみましょう!
残念!
クリの葉
クリの葉は、長い楕円形で、もとは丸く、針のように尖っています。葉の縁には、緑色の鋭いギザギザ(鋸歯)があり、鋸歯の先まで緑色をしており、よく似たクヌギの葉と区別ができます。
葉は単葉で互生し、葉の裏は柔らかい毛や腺点があり、淡緑色です。
クリの実だけでなく葉の方にも視線を向けてみましょう!