樹木の概要
マテバシイ
- 樹種(じゅしゅ):マテバシイ
- 学名(がくめい): Lithocarpus edulis
- 漢字(かんじ):馬刀葉椎
- 分類(ぶんるい):ブナ科マテバシイ属
- 別名(べつめい):サツマジイ、マタジイ
- 分布(ぶんぷ):房総半島以西の本州、四国、九州、沖縄
- 形態(けいたい):常緑広葉高木
- 樹形(じゅけい):卵形
- 樹高(じゅこう):10~20m
- 雌雄(しゆう):雌雄同株
- 花(はな):6月/雄花4mm(直径)/雄花の集まり(花序)5~9cm(長さ)/雌花2mm(直径)/雌花の集まり(花序)5~9cm(長さ)
- 実(み):花の翌年の秋(10月頃)/2~3cm(直径)
- 特徴(とくちょう):昔からマテバシイを近くの里山に植林し、利用してきた。照葉樹特有の厚く硬い葉が密生して生える性質を利用し、防風樹や防火樹、公園樹として植えられ 火にくべる薪や炭にした。堅果(ドングリ)は大きいうえ、渋みが少なく、アク抜きをせず、そのまま食べることができ、万一の食糧としても重宝された
マテバシイの話
マテバシイは高さ15mほどになる高木で、クリやスダジイと同じブナ科の仲間です。日本固有種で、房総半島から西の本州、四国、九州、沖縄に広く分布しますが、古くから植林され野生化されたものが多いため自然分布エリアが不明確になっています。もともとは九州や沖縄など南西諸島の照葉樹林帯だと考えられます。
照葉樹特有の厚みのある硬い葉を茂らせる常緑広葉樹で、丈夫なので、公園や防火・防風のために海岸近くの道沿いに街路樹として植えられています。しかし、天然のマテバシイの生態的最適域は、カシ林帯の岩場です。人間が森を切っていくにつれ岩場から里の方へと移っていき、この木が人間に都合の良い特徴を持っていたことから、広がっていきました。
何が良いのかといいますと、幹や枝を何度も切っても萌芽がたくさん出て、木の再生力が強く、昭和30年以前のエネルギー源であった薪や炭を生産するのに適していたことです。
再生した枝が堅く柔軟性があるということで、鍬、鉈、鎌のような農具の材料として重要視されてきました。
特に長崎県・鹿児島県の離島や伊豆七島、西日本の海岸付近では、マテバシイを近くの里山に植林し、利用してきました。マテバシイが純林状態で広がっていましたが、昭和30年代から、ガスなどのエネルギー革命で使われなくなり放置されたため、純林は少なくなっていきました。
原生林ではほとんどの木が「単幹生」の一本立ちとなっていますが、マテバシイのように根本から切られると再生萌芽のため「多幹生」となるものがあり、このような木が多く見られる森は「二次林」といわれます。二次林には時間が経ってもこういう再生萌芽した木がありますので、原生林と二次林の違いを見つける目安にもなっています。
マテバシイの名の由来
実がマテ貝の形に似ていることからマテバシイとよばれたという説と、待てばやがておいしいドングリになるという説がある。
マテバシイを観察しよう!
マテバシイの幹と樹皮
樹形は楕円形から卵形です。
幹はまっすぐ伸び、上の方で枝わかれし、枝は放射状に出て、こんもり茂っています。
本来は単幹生ですが、ひなもり台のマテバシイの木には人の手が入り、「ひこばえ」ができ、多幹生になっているのが特徴です。
樹皮は灰黒色で、縦に白い筋があります。ごく浅く裂けることもあります。幼木のときは、さらに白っぽく、なめらかで、皮目が縦に並んで筋状になっています。
マテバシイの葉
マテバシイの葉は、葉は厚く硬く、先の方が広いボート形で、長さ9~20㎝と大きく、縁にギザギザ(鋸歯)がありません。葉の先端は短く尖っています。
単葉で、らせん状に互生し、枝先に集まる傾向があります。葉柄はくさび状をしています。葉の表は、濃く深い緑色で、なめらかで、光沢があります。葉の裏は、薄い銀白色です。
春、新芽を出すのとほぼ同時に、年をとった古い葉をすっかり落としてしまう常緑樹です。新しい葉のそばで、古い葉は黄色く色づき、落ちます。
硬く閉じた冬芽は、丸っこい。春、冬芽がほころんでゆき、新芽が伸び、若葉が出てくる。はじめは葉の表裏に褐色の毛が散生するが、すぐに無毛になる。
マテバシイの花
5月〜6月、花の時期を迎えた照葉樹であるマテバシイの林は、一面、クリーム色におおわれます。斜めに立ち上がって咲く雄花で、森が動いているように見えるほどです。
新しく伸びた枝の先、上の方に、白い穂のような雄花が上を向いて咲きます。その下には、小枝のような雌花も斜め上を向き咲いています。よく見ると、雄花には10~12本の長い雄しべがあります。雄花は5~9㎝の穂状になっており、試験管を洗うブラシのようにも見えます。雌花は小枝のような5~9㎝の花序に、1~3個付いているだけで、地味で、あまり目立ちません。
雄花の花粉が雌花に付いて、1~3個ずつかたまって実ができますが、この実は大きくならないまま冬を越し、翌年の秋、3個のうち1個だけが、ようやくドングリになります。
大きなマテバシイのドングリ
ドングリとよばれるマテバシイの実は、花が咲いた1年目には、ほとんど成長せず、翌年の秋になって、ようやく熟します。このようにドングリには2年目に熟すものと、1年目に熟すものがあります。
マテバシイでは、花が咲いた翌年の秋、大きく細長い砲弾(大砲の弾)のようなドングリが短い枝に並んで付きます。ドングリは浅いお椀の帽子「殻斗」に包まれますが、殻斗は、うろこ模様で、大仏様の頭のような粒々があるのが特徴です。
マテバシイのドングリは全体をロウ状の物質に薄くおおわれており、少しテカテカしています。
熟れた実は、ややオレンジ色で、深緑の葉に映えて、きれいです。
やがて、ドングリがかぶっている殻斗を枝に残し、実だけが落ちます。
マテバシイのドングリは、ドングリの中でもかなり大きく、長さは2~3cmほどで、大きくて食べがいがあります。殻斗には、ぶつぶつの粒状の鱗片がある。鱗片が輪状に付くイチイガシなどのカシ類と、殻斗で区別できます。
マテバシイのドングリは、渋みやえぐみが少なく、アク抜きをしなくても、そのまま食べることができるのが特徴です。九州では焼酎を造ったり、粉にしてクッキーや樫の実こんにゃくなどにして食べてきた文化があります。
マテバシイと人とのかかわり
里山と暮らし
照葉樹マテバシイは、古くから栽培され、里山の暮らしに利用されてきました。
照葉樹特有の厚みのある硬い葉は丈夫で、繁茂しやすく、公園や防火あるいは防風のために海岸近くの道沿いに街路樹として植えられてきました。
もともと天然のマテバシイの生態的最適域は、カシ林帯の岩場でしたが、人間が森を切っていくにつれ、岩場から里の方へと移っていき、この木が人間に都合の良い特徴を持っていたことから、広がっていきました。
通常、原生林ではマテバシイは単幹生の一本立ちとなっていますが、里山では、マテバシイの幹を根本から切っても、再生萌芽が出てきて、多幹生となり、よりたくさんの幹や枝が出てきます。
つまり切っても切っても新しい萌芽がたくさん出て、木の再生力が強かったマテバシイは、昭和30年以前のエネルギー源であった薪や炭を生産する木としてとても適しておりました。というのも再生した枝は堅く、柔軟性があり、農耕のときの鍬、鉈、鎌などの農具の材料としても重要視されてきたからです。
また、マテバシイは、幹回り50cmで約5000個近くのドングリを付けるほど生産力があり、他のドングリの木に比べてたくさんのドングリを付け、その上、マテバシイのドングリは大きく、虫が付きにくく、アク抜きしなくても食べられるので、飢饉のときにマテバシイのドングリを食べて生き延びたという話などが歴史書にも登場します。
というわけで、鹿児島や長崎、伊豆諸島などの離島や西日本の海岸付近の里山には、マテバシイをたくさん植えてきました。こうした離島の里山に植えてあったマテバシイは、昭和30年代から電気やガスなどのエネルギー革命で木が燃料として使われなくなったため、放置され、今では純林は少なくなりました。
燃料としての木
電気やガスがなかった時代には、料理をしたり、部屋を暖めたりする燃料に、木(薪)や木からつくられる木炭が使われました。世界には、今でもそのような地域があります。
また、昨今は日本でも、もう一度、暮らしの燃料に木を用いることに注目がされるようになりました。キャンプやアウトドア体験での火おこしやカマド体験など、とても人気が出てきています。カマドは、内側で薪や炭を燃やし、上の穴に釜をはめて料理するもので、1960年代頃までよく使われてきました。
現在、海外で、日本のカマドをリメイクした「KAMADO」が、ダッチオーブンとならび、ガーデンパーティーなどの名脇役になっています。
「薪」は、木をあつかいやすい大きさに切り、燃えやすいようによく乾燥させたものをいいます。「炭」は、木を高温で蒸し焼きにして作られたもので、燃やしても炎や煙が出にくいため、あつかいやすくなっています。「焚き付け」は、薪や炭には火が付きにくいことから、燃えやすい小枝や松葉、樹皮など、薪や炭に火を移らせるためのもののことです。
マテバシイは、日々の暮らしの中で薪や炭、建築材、器具材、薪炭などに利用されてきました。おもちゃの独楽の材料としても、よく使われました。特に昭和30年よりも前には、里山に優占林として育てられたり、家の周りに植え、防風林、防火林などとして利用したり、いつも暮らしの中にあった木でした。
マテバシイのドングリ
マテバシイのドングリは、ほかのドングリより大きく、皮が堅いため、虫が入りにくいので食べやすいです。また、渋みやえぐみが少なく、アク抜きをしなくても、そのまま食べることができるのが特徴です。煎るといっそう美味しく食べられます。大きくて食べがいがあり、昔から飢饉のときなどに重宝されてきました。
甘くないので、粉にしてクッキーなどにすると、より美味しいです。九州ではこの実から焼酎をつくる文化がありました。
また、昔から子どもたちはドングリを使って独楽やヤジロベエを作って遊びました。特に南九州では、砲弾の形のマテバシイのドングリが人気でした。
マテバシイでドングリクッキーを作る
まずは、マテバシイのドングリを砕き、堅い殻をむき、まわりの皮を取り除きます。すり鉢に入れ、丁寧にすりつぶし、細かな粉にします。できたドングリ粉に小麦粉、バター、砂糖、卵黄にベーキングパウダー少々を入れ、手で棒状に握って調え、ナイフで約7ミリの厚さにカットします。オーブントースターでこんがり焼いたら、ドングリクッキーのできあがりです。
① ドングリの実を砕き、皮を取り除く
② すり鉢で粉になるまですりつぶす
③ ドングリ粉に薄力粉、バター、グラニュー糖、卵黄、ベーキングパウダーを加えて混ぜる
④ ③をかたまりにして、7ミリくらいの厚さに切る
⑤ オーブンでこんがりと焼く
⑥ ドングリクッキーの完成!
マテバシイクイズ
正解!
マテバシイのドングリは、ほかのドングリより大きく、殻斗が堅いため、虫が入りにくいので食べやすいです。また、渋みやえぐみが少なく、アク抜きをしなくても、そのまま食べることができるのが特徴です。煎るといっそう美味しく食べられます。大きくて食べがいがあり、昔から飢饉のときなどに重宝されてきました。
マテバシイのドングリを使い、クッキーを作ることができます。皆さんもぜひ作ってみてください!
残念!
マテバシイのドングリは、ほかのドングリより大きく、殻斗が堅いため、虫が入りにくいので食べやすいです。また、渋みやえぐみが少なく、アク抜きをしなくても、そのまま食べることができるのが特徴です。煎るといっそう美味しく食べられます。大きくて食べがいがあり、昔から飢饉のときなどに重宝されてきました。
マテバシイのドングリを使い、クッキーを作ることができます。皆さんもぜひ作ってみてください!