神聖しんせいな木きモミ

モミの由来ゆらいは、風かぜにもみ合あうところから「揉もむ」を語源ごげんとする説せつや、木材もくざいにしたとき木肌きはだが白しろいため、古来こらい、神聖しんせいな木きとされ、信仰しんこうの対象たいしょうとなっていたことから「臣木おみのき」と呼よばれ、転てんじて「もみのき」となった説せつもあります。

詳細しょうさいは、「モミと人ひととのかかわり」を見みてください。

クリスマスツリーこぼれ話ばなし

モミといえば、クリスマスツリーを思おもい浮うかべる人ひとも多おおいことでしょう。ヨーロッパでもモミが主流しゅりゅうですが、トウヒの仲間なかまも使つかわれます。モミはマツ科かモミ属ぞく、トウヒはマツ科かトウヒ属ぞくで、全まったく別べつのグループの木きです。特徴とくちょうとして、実みの付つき方かたが違ちがっており、モミは実みが上うえを向むいて付つき、トウヒは下したを向むいて付つきます。幹みきは、灰色はいいろで、浅あさくひび割われています。

モミの葉はの見分みわけ方かたを知しっていますか？

モミの葉はの長ながさは2～3cmで細長ほそながく、線形せんけいです。

若わかい枝えだに付つく若葉わかばの先端せんたんは、二ふたつにわかれて鋭するどく尖とがり、Mエム型がたがはっきり分わかります。老木ろうぼくの葉先はさきは、丸まるみを帯おびたくぼみとなります。葉はが枝えだに羽状うじょうか、らせん状じょうに付つくのが特徴とくちょうです。

モミの花はな

雌花めばなと雄花おばなは、同おなじ木きの別々べつべつの枝えだに付つき、どちらも花はなの色いろは黄緑色きみどりいろです。

胚珠はいしゅ（種たね）を包つつむカサ（果鱗かりん）は鋭するどく尖とがり、突つき出でています。

花はなや球果きゅうか（モミぼっくり）は、数年すうねんに１度どしか付つきません。

モミぼっくり

秋あき、長ながさ10cmほどの円柱形えんちゅうけいで大おおきく長ながい「球果きゅうか（モミぼっくり）」が、こずえ近ちかくの枝えだの上うえに上向うえむきに付つきます。はじめは緑色みどりいろですが、その年としの10月頃がつごろになると熟じゅくし、緑色みどりいろがかった灰褐色はいかっしょくになります。

秋あきも深ふかまると、緑色みどりいろから黄色きいろに変かわったモミぼっくりは、さらに熟じゅくし、種たねを落おとしながらバラバラと散ちっていきます。さらに熟じゅくすと、カサ（果鱗かりん）などもすべて飛散ひさんし、果軸かじくだけが残のこります。

モミの幹みき

若わかいモミの樹皮じゅひは灰色はいいろがかっていますが、老木ろうぼくになるほど暗灰色あんかいしょくになり、鱗片りんぺん状じょうに浅あさく割われ、剥はげていきます。材ざいになったときは、白しろく柔やわらかいのが特徴とくちょうです。

永遠えいえんの命いのちの象徴しょうちょうモミ

冬ふゆでも緑みどりの葉はを付つける常緑樹じょうりょくじゅモミは、世界中せかいじゅうで「永遠えいえんの命いのちの象徴しょうちょう」として大切たいせつにされてきました。

樹木じゅもくは、気候きこうに応おうじて枝葉えだはの形かたちや生はえ方かたを変かえていきます。寒さむいところでは、広葉樹こうようじゅが葉はっぱを広ひろげて光合成こうごうせいをすることが厳きびしいので、針葉樹しんようじゅが多おおくなります。しかし、針葉樹しんようじゅであっても、もっと厳きびしい寒さむさと乾燥かんそうなどが重かさなると、葉はを落おとす落葉樹らくようじゅになります。それがカラマツの仲間なかまです。野生やせいのカラマツは、日本にほんでは富士山ふじさんや日本にほんアルプスなど標高ひょうこうの高たかいところで見みることができます。

モミなど針葉樹しんようじゅの葉はは、寒さむさで大おおきさが変化へんかします。温暖おんだんな地域ちいきではナギやイヌマキのように、葉はは広ひろく、北きたに行いくほど狭せまくなります。樹形じゅけいも北きたに行いくほど鋭するどい三角形さんかくけいとなります。太陽たいようの角度かくどとの関係かんけいで、光合成こうごうせいをするために光ひかりをより多おおく確保かくほするために形かたちを変かえているからです。九州きゅうしゅうは暖あたたかいので、大おおらかな形かたちのモミと出会であうことができますね。

古来こらい、日本にほんでは白しろい色いろは神聖しんせいな色いろとされ、現代げんだいにおいても神主かんぬしや巫女みこの白しろい衣ころもや白袴しろばかまの装束しょうぞく、神棚かみだなも白木造しらきづくりと、すべて白しろで統一とういつされています。

材ざいが白しろいモミもまた、古いにしえより現代げんだいにいたるまで神聖視しんせいしされています。神社じんじゃのお札ふだや絵馬えま、結納台ゆいのうだいなどに使用しようされてきました。

小林市こばやししの木きモミ

モミは人々ひとびとの暮くらしの中なかにあり、白しろく気品きひんがある材ざいとして、内装材ないそうざいや家具かぐの材ざいとして利用りようされてきました。特とくに宮崎県みやざきけんの霧島きりしまの一角いっかくにある甑岳こしきだけの東側ひがしがわは、モミやツガなどの「甑岳こしきだけ針葉樹林しんようじゅりん」として国くにの天然記念物てんねんきねんぶつになっています。宮崎県みやざきけん小林市こばやししは、モミを市しの木きに制定せいていし、シンボルツリーとして植樹しょくじゅなどを行おこなっています。

宮崎県みやざきけん西諸県にしもろかた地域ちいき、特とくに小林市こばやししは、昭和しょうわの半なかばごろまでは、モミの製材せいざいや加工かこうが、地場産業じばさんぎょうでした。内装材ないそうざいなどモミの製材せいざいの拠点きょてんとして栄さかえ、モミの製材所せいざいじょが軒のきを連つらね、トロッコ道どうの引ひき込こみ跡あとなどが今いまでも残のこっているほどです。

現在げんざいでも、その頃ころの技術ぎじゅつを利用りようし、全国ぜんこくでも有名ゆうめいな神社じんじゃの絵馬えまなどのモミ製品せいひんを製造せいぞうしている企業きぎょうがあり、東京とうきょうの有名ゆうめいホテルのお節箱せちばこなども作つくっています。

モミの効用こうよう　その①　虫むしよけ効果こうか

モミが発はっするフィトンチッドには、虫むしよけ効果こうかがあります。普段ふだんは木きが自みずからを害虫がいちゅうから守まもるためのものですが、家いえの内装材ないそうざいや箱材はこざいとして使用しようするときにも効果こうかを発揮はっきし、虫むしから建物たてものや箱はこの中身なかみを守まもります。

モミの効用こうよう　その②　消臭効果しょうしゅうこうか

モミは香かおりが強つよすぎない（微香性びこうせい）でありながら消臭効果しょうしゅうこうかを持もち合あわせています。 そのため、食品用しょくひんようの木箱きばこ材ざいに適てきしており、お節用せちようの木箱きばこや素麺箱そうめんばこ、かまぼこ板いたなどにも利用りようされています。

また住宅じゅうたくの内装材ないそうざいとしてモミ材ざいを利用りようすると、室内しつないの生活臭せいかつしゅうや台所だいどころの臭におい、たばこ等とうの臭においの消臭しょうしゅうにも効果こうかがあります。

モミの効用こうよう　その③　調湿効果ちょうしつこうか

針葉樹しんようじゅは、木きの細胞さいぼうが大おおきく、成長時せいちょうじに多おおくの水分すいぶんを必要ひつようとするため、一般的いっぱんてきに湿度しつどを調整ちょうせいする働はたらき（調湿ちょうしつ効果こうか）が大おおきいのが特徴とくちょうです。

内装材ないそうざいとして使用しようした際さいには、室内しつないの湿度しつどはほとんど安定あんていしています。さらに柾目板まさめいたとして使用しようした場合ばあい、効果こうかが高たかくなり、すし桶おけ・米こめびつ・素麺そうめん箱ばこなどに使用しようされてきました。

霧島きりしまおろしの乾かわいた風かぜを利用りようした自然乾燥しぜんかんそう

モミを木材もくざいとして使つかうためには、しっかり乾燥かんそうさせることが大切たいせつです。普通ふつうは、機械きかいを使つかい100℃以上いじょうの高温こうおんの釜かまに入いれ乾燥かんそうさせる「人工乾燥じんこうかんそう」ですが、この乾燥かんそうでは木きの細胞さいぼうが壊こわれてしまい、木きが持もつ良よい成分せいぶんも消きえてしまいます。モミの効能こうのうを最大限さいだいげんに活いかすために選えらばれた乾燥方法かんそうほうほうは、「霧島きりしまおろしの乾かわいた風かぜ」にさらして乾燥かんそうさせるという「自然乾燥しぜんかんそう」です。人手ひとでも時間じかんもかかりますが、小林こばやしの製材所せいざいじょでは、今いまでもこの自然乾燥しぜんかんそうをしており、モミ特有とくゆうの貴重きちょうな成分せいぶんを失うしなうことなく、また無理むりな乾燥かんそうではないため板いたの歪ゆがみなども少すくなく、上質じょうしつの材ざいを出だしています。