照葉しょうよう樹じゅ林帯りんたいに生育せいいくし、ひときわ目めをひく大木たいぼくになるのが、スダジイです。通常つうじょうでも高たかさ20mになる常緑じょうりょくの広葉樹こうようじゅです。日ひなたでも日ひかげでもよく成長せいちょうし、枝えだが伸のびるのが早はやいのが特徴とくちょうです。

大おおきく成長せいちょうすると樹冠じゅかんがドーム型がたになり、スダジイの林はやしはまるでブロッコリーが集あつまっているかのように見みえます。また、花はなの咲さく年としには林はやし全体ぜんたいがクリーム色いろになり、一転いってんしてカリフラワーが集あつまっているように見みえ、その変化へんかを楽たのしむことができます。

スダジイはブナ科かシイ属ぞくで、日本にほんにはシイの仲間なかまは２種類しゅるいありますが、通常つうじょう、「シイノキ」という場合ばあいは、スダジイ（イタジイ）とツブラジイ（コジイ）を指さします。いずれも春はるから初夏しょかにかけて、いっせいに開花かいかし、淡黄色たんおうしょくの雲海うんかいのように波打なみうち、たいへん美うつくしいです。名前なまえが似にたブナ科かの木きにマテバシイもありますが、シイ属ぞくではなくマテバシイ属ぞくの木きで、どちらもドングリを付つけます。

スダジイの別名べつめいは、イタジイ（板いた椎じい）ですが、この名なの由来ゆらいは、板状いたじょうの根ねっこができやすいので、こう呼よばれています。

天然てんねんのスダジイは環境かんきょうに強つよく、太平洋たいへいよう側がわでは福島ふくしま県けん、日本海側にほんかいがわでは新潟にいがた県けんから沖縄おきなわ県けんまでの海岸かいがんから標高ひょうこう800mくらいの照葉しょうよう樹林じゅりんの上限じょうげんまで生育せいいくしています。

これに対たいしてコジイは静岡しずおか県けん伊豆いず半島はんとう以西いせいから鹿児かご島県しまけんの大隅半島おおすみはんとうの中部ちゅうぶまでとなっており、若狭湾わかさわん沿岸えんがん以北いほくの日本海側にほんかいがわは少すくなく、鹿児かご島県しまけんの離島りとうや沖縄県おきなわけんには生育せいいくしていません。

スダジイの実み（ドングリ、堅果けんか）は、北きたの方ほうにいくほど大おおきくなり、関東かんとうの北部ほくぶのドングリは、宮崎みやざき県けんのスダジイのドングリの2倍ばいぐらいの大おおきさがあります。

スダジイの木きが枯かれ、椎茸しいたけの菌きんが繁殖はんしょくすると椎茸しいたけが生はえてきます。シイの木きに生はえるので、椎茸しいたけという名前なまえがついたといわれています。

スダジイの名なの由来ゆらい

スダジイについてはその実みが巻貝まきがいの一種いっしゅの「シタダミ」に似にていることから、「シタダミシイ」が訛なまって「スダジイ」となったとの説せつがあります。あるいは、椎茸しいたけ栽培さいばいの原木げんぼくを「スダギ（素台木すだぎ）」と呼よぶことから、椎茸しいたけ原木げんぼくに使つかう木きの意味いみでスダジイとなったともいわれています。

スダジイの幹みきと樹皮じゅひ

樹皮じゅひはゴツゴツとした黒褐色こくかっしょくで、大木たいぼくになると、縦たてに深ふかくはっきりとした割われ目めが入はいります。よく似にたツブラジイ（コジイ）は、果実かじつがより小ちいさくて丸まるく、樹皮じゅひの縦たての割われ目めがあまり目立めだたず、つるりとしたまっすぐな幹みきです。葉はも少すこし小ちいさくて、薄うすいです。

若わかい枝えだは、褐色かっしょくを帯おびた灰褐色はいかっしょくで、楕だ円形えんけいあるいは円形えんけいの皮目ひもくが多おおいです。

ツブラジイ（コジイ）の枝葉えだはが細ほそく、幹みきは高たかく伸のびるのに対たいして、スダジイの樹冠じゅかんは横よこに開ひらきます。樹形じゅけいは卵形たまごがたになります。

若葉わかばの裏うらが銀ぎん白色はくしょくのスダジイ

葉はには光沢こうたくがあり、長ながさ5～10cmの長ながい楕だ円形えんけいで、葉はの先端せんたんが尾おのように長ながく伸のびています。鋸歯きょしはないことが多おおいですが、ときに葉はの上部じょうぶにわずかに、ゆるやかな鋸歯きょし（ギザギザ）が出でていることもあります。

葉はの表おもては、深緑色しんりょくしょくで光沢こうたくがあり、厚あつい革質かくしつ。はじめは淡褐色たんかっしょくの細毛さいもうが生はえますが、すぐに無毛むもうになります。

葉はの裏うらは、若わかいときは銀ぎん白色はくしょくで、のちに灰褐色はいかっしょくになり、鈍にぶい光沢こうたくがあります。うろこ状じょうの銀灰色ぎんかいしょくの毛けが生はえています。金属きんぞくのような色合いろあいの葉裏はうらは、よく目立めだちます。

葉はの基部きぶ（下部かぶ）は、くさび型がたで、左右さゆう対称たいしょうではありません。葉柄ようへいは、約やく１cmです。

スダジイの花はな

4月がつから5月がつ、若葉わかばと一緒いっしょに、雌花めばなと穂ほになった雄花おばなが新あたらしい枝先えださきで開花かいかします。

雄花おばなは直径ちょっけい3ミリで、ヒモのような雄花おばなの集あつまりは雄花序ゆうかじょと呼よばれ、長ながさ8～12cmほどで、上向うえむきに伸のび、下したに垂たれ下さがり、たいへん目立めだっています。強つよい匂においを発はっし、昆虫こんちゅうを呼よび寄よせます。

雌花めばなの集あつまり（花序かじょ）は、雄花序ゆうかじょよりも少すこし短みじかく６～10cmほどで、新あたらしい枝えだ先さきにある葉はの付つけ根ね（葉腋ようえき）から直立ちょくりつしますが、枯かれれ枝えだのようで、あまり目立めだちません。

煎いって食たべると美味おいしいスダジイのドングリ

花はなが咲さいた翌年よくとしの秋あき（10月がつごろ）、１年ねんかけて熟じゅくした実みが登場とうじょうします。（二年にねん成なり）

先さきがとんがった細長ほそながい卵形たまごがた、しずくの形かたちをしたシイの実み（ドングリ）は、長ながさ1.2～2.1cmの堅果けんかで、ふくろ状じょうの殻斗かくとに包つつまれ、短みじかい毛けが見みられます。熟じゅくすと３方向ほうこうに裂さけ、割われ目めから茶色ちゃいろのドングリがこぼれ落おちます。

スダジイのドングリは乾かわくと実みが自然しぜんに割われて、白しろい子葉しようが現あらわれます。シイの実みは、昔むかしから食たべることができるドングリとして有名ゆうめいで、甘あまくておいしいです。そのまま生なまでも食たべることもできますが、煎いって食たべると、アーモンドよりも香かおりが高たかく、さらにおいしく食たべることができます。

照葉しょうよう樹林じゅりんがある暮くらし

スダジイの材ざいの、弾力だんりょくがある材質ざいしつを利用りようして、建築材けんちくざいや農具のうぐなど道具どうぐの柄え、家具かぐ、枕木まくらぎ、椎茸しいたけの原木げんぼく、パルプ原料げんりょうなどに使つかわれています。

ドングリの話はなし

ブナ科かのドングリで、ほとんどアクや渋しぶみがないのは、クリとスダジイ（ツブラジイを含ふくむ）だけです。しかし、クリは大おおきく食たべ応ごたえがありますが、スダジイは小ちいさいため食用しょくようには使つかわれておらず、ややアクがありますが、イチイガシやマテバシイのドングリが食用しょくようとされてきました。

秋あきに実みのる堅かたい実みは、シイの実みとか、ドングリと呼よばれ、食用しょくようになります。殻からを割わって中身なかみを煎いると、香こうばしい秋あきの匂においがしたドングリコーヒーになります。煎いって食たべると風味ふうみもあります。

スダジイの木きが枯かれ、椎茸しいたけの菌きんが繁殖はんしょくすると、椎茸しいたけが生はえてきます。シイの木きに生はえるので椎茸しいたけという名前なまえがつきました。

樹皮じゅひはタンニンを多おおく含ふくみ、漁網ぎょもうを染そめるのに用もちいられてきました。

また、黒くろの伝統色でんとうしょくに「くろつるばみ」という色いろがあるのですが、「つるばみ」とはクヌギの古称こしょうで、ドングリで染そめた色いろのことをいいます。平安へいあん時代じだいの貴族きぞくが喪もに服ふくするときに身みにつけた茶色ちゃいろ味みを帯おびた黒色くろいろのことをいいました。

ドングリで遊あそぼう！

森もりを少すこし散策さんさくしてみると、足元あしもとにはドングリがいっぱい！

種類しゅるいや形かたちも様々さまざまなドングリを使つかって、かわいいおもちゃを作つくってみよう！