樹木の概要
スギ
- 樹種(じゅしゅ):スギ
- 学名(がくめい):Cryptomeria japonica
- 漢字(かんじ):杉
- 分類(ぶんるい):ヒノキ科スギ属
- 別名(べつめい):直木(すき)
- 分布(ぶんぷ):東北地方以南の本州、四国、屋久島南限の九州
- 形態(けいたい):常緑針葉高木
- 樹形(じゅけい):円錐形
- 樹高(じゅこう):20~50m
- 雌雄(しゆう):雌雄同株・雌雄異花
- 花(はな):2~3月/雄花5~8mm(直径)/雌花2~3cm(直径)
- 実(み):10月/2~3cm(直径)
- 特徴(とくちょう):まっすぐで利用しやすく、加工がしやすい。宮崎県日南市や五ヶ瀬町のシンボルツリー
スギの寿命は平均500年ほどといわれますが、屋久島の「縄文杉」は2000年以上といわれており、たいへん長寿です。宮崎県内では、椎葉村の八村杉(十根の杉)が、「那須大八郎*」の手植えと伝えられ、樹齢800年以上あるといわれています。
*那須大八郎:平家討伐のため平家の残党を追って、椎葉を訪れた源氏の武将
スギの話
スギはヒノキ科の常緑針葉樹で、ヒノキやサワラも同じヒノキ科の仲間です。スギは日本固有種で、天然のスギは東北地方以南の本州、四国、九州の屋久島まで、雨や雪の多い山地に分布しています。岩の上など条件の悪いところでも生えることができ、湿ったところを好み、山地の沢沿いや崖の雨量の多い地域に見られます。
自然条件の中では広葉樹との競争に弱い木ですが、自然災害などで競争していた他の木々が育ちにくい場所では、ひときわ大きくなる場合があります。広葉樹の森の中で王様のようにそびえる姿は偉大で、まっすぐに天を突くようで、まるで神の木のようです。また、たいへん長寿で、大きくなるため、古くから森や地域のご神木として、人々に畏怖の念を抱かせてきました。日本人の暮らしの中で、とても貴重な木として大切にされてきました。
スギは、ほどよい暖かさと水が大好きな木です。スギが生育しやすい環境を表すために、「尾根マツ、沢スギ、中ヒノキ」などと、林業の世界ではいわれてきました。「杉」という漢字のつくりは、子葉が三枚だからという説と、水を好む木だからという説があります。
香気成分ゆたかなスギ
スギは、森林浴でも知られているフィトンチッドなど香りの成分が多く、殺菌作用や虫を寄せ付けない作用などがあります。その効果で、若いスギ林には虫が少なく、キノコなどもあまりできません。
屋久島のスギの森
屋久島の白谷雲水峡のようにスギ林も100年を超えると、植物も多様化し、それを食する鳥や虫、動物なども増え、コケも生え、林全体が生物多様性のある美しい森になっていきます。
スギを観察しよう!
スギを探してみましょう!
スギの幹はまっすぐ上へ、枝はやや斜め上に伸びます。高齢のスギの樹形は、先がやや丸みのある美しい円錐形で、葉がもこもこした感じになります。
スギを探す場合、まずは美しい円錐形の樹形の針葉樹を探してみましょう。スギ以外にもヒノキ、マツなどの針葉樹が生えていますね。
針葉樹を見つけたら、葉をよく観察してみましょう。植物を見分けるコツは、葉や花、果実などの特徴を細かく見ていくことです。
スギの幹を観察してみましょう!
スギの樹皮は赤褐色で、縦に長く裂け、帯状に薄く剥がれます。
老木になっても樹皮にはあまり大きな変化はありません。
スギの葉を観察してみましょう!
スギの葉は1cmほどの針のような形で、鎌の刃のように曲がっており、らせん状に互い違いに生えています(互生)。葉の先は鋭く尖り、さわると痛いです。
スギは一年じゅう緑の葉を付けています。このように冬でも葉を落とさない木のことを「常緑樹」といいます。
一年中、葉を付けているといっても、ほかの木々と同じように、春になると新芽が開き、新たな黄緑色の枝を伸ばし、花を咲かせます。
2年か数年おきに古い枝葉は落ち、毎年、新しく伸びてくる枝や葉と入れ替わっています。
スギは、小さな葉が1枚1枚落ちるのではなく、茶色く枯れた枝ごと落ちます。
スギの花を観察してみましょう!
スギには雄花と雌花があり、雄花は宮崎では2月から3月ごろに開きます。同じころ、枝の先にも雌花が咲き、花粉を受け入れるための準備をし(受粉液を出し)、空に舞っている花粉をつかまえます。スギの花粉の量は多く、しかも数10km、ときには数100kmも風に乗って飛びます。
スギの雄花のつぼみは、前年の夏から作られ、冬には茶褐色のつぼみとなり、春の開花を待ちます。春になると、花粉をたくさん付けた雄花で、木全体が茶褐色に染まります。 いよいよ花粉を春風にのせ、遠くに飛ばす準備が整ったようです。
スギの雌花と雄花が同じ一つの枝に付きます(雌雄同株)。スギは自分の花粉が雌花に付くと良い種ができません。そこで、よそから飛んで来る他のスギの花粉を取りやすくするため、雌花は枝先に、雄花は枝下に付くのです。
スギぼっくりを観察してみましょう!
スギといえば最近はすぐに「スギ花粉」を思い浮かべる人が多いと思われますが、スギは風媒花です。
花粉が枝先にある緑から紫色をした目立たない雌花に届き受粉すると、マツぼっくりに似た緑色の球果に育ちます。直径2~3cmで、卵形の球果は、「スギぼっくり」と呼ばれています。「球果(スギぼっくり)」は、種そのものではありません。種を守るために葉が変化した「鱗片葉」が次第に木のように硬くなったものです。花が咲いた年の秋から翌年の早春に熟します。褐色に変わった球果が割れ、そのすき間から小さな種たちが、風に散りながら落ちていきます。
スギと人とのかかわり
スギの名の由来は、成長が早く「スクスクと生える木」とする説と、真っすぐに伸びることから「すぐ(直)な木」とする説、すくすく上に伸びることから「ススキ(進木)」とする説など、「成長」に由来する諸説があります。
成長が早いことで、古くから日本建築の適材として注目されました。また、木材の品質もすぐれており、「まっすぐ」で加工しやすく、「木目は整っていて美しく」、ものづくりに必要な「強さ」を持っています。そのことからスギは、日本各地で建築の用材として人の手によってに植えられ、結果、今では日本でもっとも人工造林の面積が多い木となっています。
古代より日本人の暮らしの中にあったスギ
縄文遺跡から出土した丸木舟などで分かるように、スギは舟の材として縄文時代から利用されるなど、人の暮らしと身近にありました。
出土した木舟には、マツやクスノキ、カヤで作られたものもありますが、スギで作られたものが最も多く出土しています。
弥生時代には、静岡県の登呂遺跡などで、水田の水路の土留め用に大量のスギが使われていました。
奈良時代の平城京周辺でも、角材や井戸枠にスギが使用されています。
また、奈良時代までは「マツ」もまた、全国的に分布し、人々の生活の周辺にあったので、建築材料として重要な位置を占めていたそうです。
日本神話を記した「日本書記」には、スギについて次のように描かれています。
「スサノオノミコトは、髭をぬいて植えるとスギに、胸の毛からはヒノキ、尻の毛からはマキ、眉毛からはクスノキが生まれ、スギやクスノキで舟を、ヒノキで宮を、マキで棺桶をつくるように教えた」
スギは木目がまっすぐで、割りやすく、板に加工しやすい材だったからでしょう。
日本建築の材として植林されたスギ
天然杉が分布する一部の地域で建築材として利用されていたスギは、室町時代以降、日本中で植林されるようになりました。日本人は今日まで植林、伐採と植林を繰り返しながら、建築材としてスギを利用してきました。
スギ材の利用
スギ材は、国産材では、いちばん多く、日本人になじみが深い木です。日本にしか生育していない固有種で、成長が早く、幹がまっすぐに伸び、柔らかく、割りやすい材質で、古くから暮らしに欠かせない材として、建物のほか醤油樽や桶、曲げわっぱ、家具などに利用されてきました。
宮崎県はスギ丸太生産量が1990年から連続日本一
宮崎県は、スギ素材(丸太)生産量が1990年から連続で日本一になっています。
スギの植林の歴史も古く、文献によると、江戸時代から急速にスギの植林が広がったことが分かります。
宮崎県内では、日南市が「飫肥杉」を、五ヶ瀬町が「アオスギ」を自治体の木に指定しています。
飫肥杉
飫肥杉は、日南地方を中心に飫肥藩の政策として、船や建物の材として植えられました。成長が早く、樹脂分を多く含み、強度と柔軟性をあわせもつため加工しやすく、水に強いことから、江戸時代から明治時代にかけて活躍した「チョロ船」とよばれる木造帆船(弁財船)の材として利用されました。
酒蔵の杉玉
昔ながらの造り酒屋には、大きな「杉玉」が下げられているのを見かけることもあります。毎年、新酒ができあがった印に、緑のスギの葉を束ねてつくり、スギの葉が茶色く色づくころには、お酒も樽の中でおいしくなっていることを杉玉は伝えています。日本酒は、木の樽に入れておく間に木の香りが移り、おいしくなります。昔から吉野のスギが木樽に一番良いとされています。
スギクイズ
正解!
スギを探してみよう!
スギの木を探す場合、まずは美しい円錐形の樹形の針葉樹を探してみましょう。
スギの幹はまっすぐ上へ、枝は斜め上へ伸びます。高齢のスギの樹形は、先がやや丸みのある美しい円錐形で、葉がもこもこした感じになります。
スギ以外にも針葉樹はヒノキ、マツなどが生えています。針葉樹を見かけたら葉をよく観察してみましょう。スギの葉は、1cmほどの針のような形で、鎌の刃のように曲がっており、らせん状に互生しています。葉の先端は鋭く尖り、さわると痛いです。
スギは、小さな葉が1枚1枚落ちるのではなく、茶色く枯れた枝ごと落ちていきます。
植物を見分けるコツは、葉や花、果実などの特徴を細かく見ていくことです。皆さんもこれらのことを注意して植物を見ていきましょう。
残念!
スギを探してみよう!
スギの木を探す場合、まずは美しい円錐形の樹形の針葉樹を探してみましょう。
スギの幹はまっすぐ上へ、枝は斜め上へ伸びます。高齢のスギの樹形は、先がやや丸みのある美しい円錐形で、葉がもこもこした感じになります。
スギ以外にも針葉樹はヒノキ、マツなどが生えています。針葉樹を見かけたら葉をよく観察してみましょう。スギの葉は、1cmほどの針のような形で、鎌の刃のように曲がっており、らせん状に互生しています。葉の先端は鋭く尖り、さわると痛いです。
スギは、小さな葉が1枚1枚落ちるのではなく、茶色く枯れた枝ごと落ちていきます。
植物を見分けるコツは、葉や花、果実などの特徴を細かく見ていくことです。皆さんもこれらのことを注意して植物を見ていきましょう。