樹木の概要
タブノキ
- 樹種(じゅしゅ):タブノキ
- 学名(がくめい):Machilus thunbergii
- 漢字(かんじ):椨の木
- 分類(ぶんるい):クスノキ科タブノキ属
- 別名(べつめい):イヌグス、タブ、タマグス
- 分布(ぶんぷ):東北地方以南の本州、四国、九州、沖縄、台湾、中国、朝鮮半島南部
- 形態(けいたい):常緑広葉高木
- 樹形(じゅけい):卵形
- 樹高(じゅこう):15~25m
- 雌雄(しゆう):両性花
- 花(はな):4~5月/約9mm(直径)
- 実(み):8~9月/約1cm(直径)
- 特徴(とくちょう):照葉樹の代表的な木で、大木となる。かつては水田の適地に多く自生していたことから沖積地の水田の発達とともに伐採された。現在は、暖地の海岸樹林に若いタブノキ優占林が見られる
タブノキの話
タブノキは、一年中、緑の葉を付ける常緑の広葉樹で、高木です。自生するタブノキは、暖かい地域の海沿いの山に多く、日本や朝鮮半島の南部、台湾、中国など暖地の海岸近くに生え、照葉樹林を代表する木で、枝を広げ、大径木になる木もあります。
もともとタブノキの巨木がある森は、海岸の低地や川の上流から土砂が流れてきて蓄積された沖積地であったり、内陸山地の土壌の発達したところです。そこは非常にすぐれた生産性のある肥沃な土地で、特に沖積地は、上流からの水が引き込みやすい土地でもあったことから水田に適していて、稲作の広がりとともにタブノキの巨木林は水田に変わり、いつしか沖積地では見られなくなっていきました。
少し残されているところは、礫(小さい石)がいっぱい入っていて、耕作地には向かない場所や、海岸樹林のみです。
宮崎県でその姿がわずかに残っているのが、日向市から高鍋町にかけての海岸や串間市の海岸、鹿児島県側では、志布志市や肝付町などの海岸です。
暖地が好きなタブノキですが、照葉樹の中でも寒さに非常に強いタイプの木です。たとえば標高600~800m付近のえびの市白鳥温泉付近には、常緑樹林の保護林がありますが、そこにはタブノキやアカガシ、スダジイ、モミの大径木をたくさん見ることができます。
タブノキの名の由来
タブノキは霊が宿る木とされ、古代では信仰の対象となっていました。それが「霊の木」であり、タモ、タブ、タブノキと変化したと考えられています。
タブノキを観察しよう!
タブノキの幹と樹皮
幹は、太さ1mにもなります。若い枝は緑色をしており、無毛です。
樹皮は、やや灰色がかった淡褐色で、なめらかで、皮目があります。幼木の樹皮は、縦に浅く裂け、筋状になっていますが、成木になると、葉はやや厚くなり、いぼ状の皮目がやや密にみられ、粒状に剥がれます。
タブノキの葉
夏、枝葉が茂り、もう果実が肥りはじめています。
夏は落葉樹にとっていちばんの稼ぎどきです。夏の強い光を受けて、パワー全開で「光合成」をし、大切な糖類をつくり出し、根から吸い上げた養分や水分と共に、一気に翌年の芽(冬芽)までつくり上げていきます。
葉は、枝先に互生します。長さは、やや長く、8~15cmほどです。形は、長い楕円形で、先端は短く突き出ています。
葉は、厚くて硬く、無毛です。表に艶があり、縁にはギザギザ(鋸歯)がありません。葉をすかしてみると、細かい網の目のような葉脈がよく見られます。
新緑の色が木によっては極端に赤くなります。
タブノキの冬芽
鱗片に包まれた大きい楕円形の冬芽を1個、枝先に付けます。新芽は、赤色が目立ちますが、緑色のものもあります。4〜5月頃、芽鱗に包まれていた冬芽がのび、全体に薄桃色に色づき、まるで花のような芽になります。
小さな黄緑色の花が可憐なタブノキ
花は、春(4~5月)に咲きます。新しい赤い芽と一緒につぼみが伸びて、新しい葉と一緒に小さな黄緑色の花が枝の先に多数集まってまとまって付き、みごとです。
個々の花は直径1cmほどで目立ちませんが、木全体で大量に花を付けるため、多くの昆虫を呼び寄せます。
両性花です。タブノキの花には、花びらとガクが一緒になった花被は全部で六つあり、雌しべが1本、雄しべが12本あります。
赤い果軸が美しいタブノキの実
5月頃、緑色の丸い形をした、直径1cmほどの果実が実ります。実は夏になると熟し、黒みがかった紫色の球形の、やわらかな実になります。
赤い果軸との色の対比が目立ち、鳥たち、特にムクドリの注意を誘います。鳥たちは、好んで熟した黒い実を食べにきます。薄い果皮をむくと、中がとろりとした緑色の薄い果肉が出てきます。口にすると、ヤニ臭く、エグ味があります。アボカドも同じクスノキ科の仲間になります。味も同じクスノキ科のアボカドに近い味がします。果肉には油脂をたっぷり含んでおり、種は一つです。
タブノキと人とのかかわり
タブノキと暮らす
クスノキの仲間ですが、クスノキにくらべて木の質が悪く、香りも少ないということで、イヌグスと呼ばれ、さげすまれましたが、実際は、タブノキはさまざまな用途に利用されていました。この木から古代人は丸木舟をつくり、それに乗って、大海原をわたり、日本にやってきました。このようにタブノキは、かつては、海とのつながりが深い木でもありました。
建築材として
タブノキの材は、建築材、家具材、彫刻材として利用されてきました。
日本の中世期、鎌倉時代以降の武家社会になると、大きな建物を権力の象徴として建てられましたが、昔はタブノキの巨木がたくさんあったということもあり、1メートル以上の幅の一枚板が床の間や廊下、玄関などに、たくさん使われていました。
線香などの糊として
また、灰褐色の樹皮は、黄八丈などの黄褐色の染料として用いられ、枝葉には粘液が多く、乾かして粉にするとタブ粉が得られます。今でも皮を干して粉にしたものを練り、糊にして、香料を混ぜて、「線香」を作っています。
種子からは蝋や油がとれます。
タブノキクイズ
正解!
タブノキの葉は、枝先に互生します。葉の長さは、やや長く、8~15cmほどです。葉の形は、長い楕円形で、先端は短く突き出ています。
葉は、厚くて硬く、無毛です。表に艶があり、縁にはギザギザ(鋸歯)がありません。葉をすかしてみると、細かい網の目のような葉脈がよく見られます。
正解以外の葉はケヤキとクリです。ケヤキとクリの葉は、タブノキにはない鋸歯があります。
その他の違いも見つけてみましょう!
残念!
タブノキの葉は、枝先に互生します。葉の長さは、やや長く、8~15cmほどです。葉の形は、長い楕円形で、先端は短く突き出ています。
葉は、厚くて硬く、無毛です。表に艶があり、縁にはギザギザ(鋸歯)がありません。葉をすかしてみると、細かい網の目のような葉脈がよく見られます。
正解以外の葉はケヤキとクリです。ケヤキとクリの葉は、タブノキにはない鋸歯があります。
その他の違いも見つけてみましょう!